では、同居でお願いします
不甲斐なさと恥ずかしさを堪えつつ、俯きながら口を開く。

「……借金とかがあるのではく、実は部屋を借りなくてはならなくなって……その、敷金とかが……」

そうなのだ。
もう親友の美奈は新居に引っ越しを終え、今月末で部屋の契約も終わる。

働きながら部屋探しを続け、ようやく古いが家賃格安の物件を見つけたのだが、ネックとなったのは敷金だった。
家賃は格安のくせに敷金は二十万必要で、それだけの貯蓄もない自分が恥ずかしかった。

海外の親に頼ろうにも、あちらも今は事業を立ち上げたばかりで金の無心をするのは難しく、どうにも困っている。

そんな事情を訥々と説明する私に、裕哉はギュッと眉根を寄せ、怒ったような声を出した。

「そんな事、もっと早くに僕に相談してくれればよかったのに。それに女の子が一人暮らしするのに、その物件、駅から遠いし古くてセキュリティーも不安だよ」

「でも、家賃が安いから……」

ボソッと言った私に、裕哉は思わぬ提案を寄越してきた。

「じゃあさ、僕の部屋においでよ。家賃不要だよ? マンションの部屋は余ってるし」

「……は?」

一瞬意味がわからずポカンとしたが、すぐにブンブンと首を振る。

「いやいやいや、そこまで迷惑かけられないよ! 仕事を世話してくれて、その上部屋まで占拠するとか、厚かましいこと出来ないよ!」

裕哉は会社から一駅の高級マンション住まいをしている。中に入ったことはないけれど、外観からして想像出来る。

中はきっと広い。

一人暮らしには広すぎるだろうが、だからといって男女で一緒に住むなんて……。
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