年下くんの電撃求愛
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世の中には、釣り合いという言葉がある。
並べ合わせた二者のバランスが、ちょうどいいという意味の。

類は友を呼ぶ、ということわざもある。
似通ったものは、自然と寄り集まるという意味合いの。

そして同じく、世の中には、奇跡や運命という現象がある。

その奇跡や運命が起こってしまえば、たとえどんっなに釣り合わなかろうが、まったく似通ってなかろうが、ある2つのものが結びついてしまうことが、起こりえるのだ。

結びついて、お互いを知って、もっと結び目を強くして、そして……

……これからの一生を共にしようと誓ってしまうことだって、ありえるのだ。



「ぶわーはっはっは!!ひーっ!!」


午後7時半。定時をとっくに過ぎ、フロアに残る社員も少なくなってきた現時刻。

廊下に立ち並ぶミーティングルームの一室に、品のない笑い声が響いた。

出所は、我らがボス、大貫支店長だ。

ここ最近、頭部の髪が少し元気を無くしてきたものの、彼のゴリラ感はいまだ健在。アマゾンの樹木に喜んで迎え入れられる容姿であることは変わっていない。

そんな支店長を、「話があるんです」とミーティングルームに呼び出したのは、わたしーー本河透子と、その後輩、鷹野くんだった。

わたしたちの間柄を、単に先輩後輩で表すのは、もうおかしいかもしれない。

なぜなら先ほど、わたしたち2人は支店長に、結婚報告を行ったばかりだからだ。

その結果、この爆笑だ。失礼きわまりないと思う。


「ひーっ、ここ数年で一番笑ったわ!!なにお前ら、マジか!!」

「……マジですけどなにか」

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