年下くんの電撃求愛
入らないどころか逆に抜け、わたしの体は芯を奪われたように、ふにゃりとやわらかくなってしまう。
「は……っ、」
完全に腰が抜けて、ぺたんと後ろに尻もちをついたとき、わたしはやっと、鷹野くんから解放された。
息を上げたわたしのほおに、ほんの一瞬だけ、鷹野くんの指先が触れた。
それがなにを意味するのか。
ちっとも考えが行き着かないでいるわたしを置いて、立ち上がった鷹野くんは、振り返らずに、倉庫を出て行ってしまった。
バタン、と扉が閉まる音がする。昨日と同じ展開だった。昨日もこんなふうに、突然キスされて、置いていかれたのだ。でも。
人差し指で、そっとくちびるをおさえる。
残された感覚も、混乱も。昨日よりさらに、大きなものになっていた。
『本当に一切、覚えてないんですか?』
言われたばかりの言葉が、頭の中で反響する。
どういうこと?覚えてないってなに?整理できない様々な感情が、ぐるぐるとうずまく。
わたしもはやく戻らなければ。社員のみんなから変に思われてしまう。処理しなければならない業務だって、まだたくさん残っている。
そう思うのに。
わたしは床に尻もちをついたまま、しばらくその場を、動けないでいた。