年下くんの電撃求愛
⚫︎
⚪︎


鷹野司くん。

彼が入社してきたのは、今から2ヶ月とすこし前の、桜咲く4月のことだ。

鷹野くんの入社日。わたしたちは、指導する側と指導される側として、初対面を果たした。


『ご指導よろしくお願いします』


白い歯をのぞかせてから礼をしたーーそんな彼の第一印象は、まさに、“ 正統派の王子様 ”だった。

見目麗しくて、礼儀正しくて、真面目。

実際に業務が始まってからも、その印象は何一つ変わらなかった。

……それなのに、だ。

ここ数日で、その印象は、がらりと変わってしまった。

わたしは気づいてしまった。

本当の彼は策士で、わりとけっこう腹黒くて、なんだかとってもテクニシャンな一面を持つ男性だということに。

わたしは彼の、いろんな表情を見つけてしまった。

はりつけた営業スマイルではない、含みをもたせた笑みや、意地の悪い笑顔。

色香を存分にふくんだ、男の顔。怒りをはらんだ、切なげな顔。

わたしはとても混乱して、彼のことばかりを考えてしまって……そうしたら、見たことのないはずの、聞いたことのないはずのシーンを、頭の中で再現してしまうまでになった。


『……可愛いですよ、あなたは』


そう言ってわたしの頭を撫で、とても甘く、優しく微笑む顔。


……やばい、末期だ。妄想のいきすぎだ。

< 23 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop