年下くんの電撃求愛
⚫︎
⚪︎


午前7時半から9時まで。

朝の通勤ラッシュとされる時間帯でも、わたしの利用する電車は、いつも比較的すいている。

都心がある側と、逆方向に進むからだろうか。どういう理由にせよありがたいことで、わたしは毎日、楽に座席を確保することができる。

職場の最寄り駅につくまでの、20分間。

がったん、ごっとん。心地よい揺れに身をあずけるひとときは、これから仕事に向かう憂鬱さをやわらげてくれる、大切な時間……

……の、はずなのだけれど。


「ほんっとウザいよねー!!あの鬼ババアっ!!」


本日の車内。ひびいた一言が、わたしの安寧をぶちこわした。

出どころは、偶然同じ電車に乗り合わせていた、新人女性社員2名。

そして彼女たちが声高々に語っているのは、どうやらたぶん……わたしの悪口だと、思われるもので。


「書類の添削細かすぎるっつーの!!顧客の名前の漢字まちがえたくらいで怒ってくるしさぁー」

「ね!!山田が山本になってたくらいで、失礼にあたるとかってキレなくてもいいよねー!?」

「ほんっと融通きかないよねー!!しかもなにあの手抜きな髪型!昭和?」

「あははっ、女忘れてるよあれー。顔うっすいくせに、化粧っ気もないし!!」


わたしの存在にまったく気づいていない彼女たちの会話は、どんどんヒートアップしていく。

< 3 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop