年下くんの電撃求愛

けれど、今気づいた。気づかされた。

わたしはきっと、一番、正攻法に弱いのだ。

こんなにも真っ直ぐ、好きがにじむ言葉をたくさんぶつけられたら、かたく閉ざそうとしてみても、心の門じたいがもう、やわやわになってしまう。

……本気、なの?

言葉にできず、心のなかで、目の前の鷹野くんに問いかける。

どうしてそんな。どうして、わたしなんかに。

自分が吐く息が、あつい。だめだ。だめだだめだ。

……なんかすごく、今は、だめだ。


「……あ、の……鷹野くん」


上昇する熱のせいで、正常な判断ができなくなりかけている頭。

そこにかろうじて残っているひっかかりを、わたしは口にした。

聞くなら、今しかないと思った。

鷹野くんの、長いまつげをたたえた目が、わたしをうつし出す。

目線をはずし、自分の膝に落として、わたしは声を絞り出した。


「あの、こないだ言ってた、“ 前の ”って、なにーーっ、」


ーーくっ、と。

顎を取られた。喉が詰まり言葉を止めた、その瞬間に、くちびるをうばわれた。

それはまるで、息の根を止める、一撃だった。


「ん……っ、」


言葉の続きも、呼吸も、思考能力も。

くちびると一緒に、なにもかもをうばって、かわりにあらがいようのない麻薬を、全身に注ぎ込まれる。

瞬時に、力が抜ける。合わさったくちびるの内側から水音がして、それを聞いてしまった耳まで、だめになる。

指がピクつき、腰がふるえる。

心臓があばれる。

目の前の彼にすがって、なにもかもを、あずけてしまいそうになる。


「は……っ、」


やっとすこしはなれた、鷹野くんのくちびる。

熱をはらんだそこから、吐息交じりの言葉がこぼれた。


「……好きです」

「……っ、」

「あなたが、好きです」

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