年下くんの電撃求愛

いつの間にか、重ねられていた手。

まるで触れた部分から直接注入するかのように、繰り返される、好きの言葉。

綺麗な瞳には、野生の何かがやどっていて。

すぐ間近から向けられる熱視線にたえきれず、わたしは首を折り曲げる。


「……顔、上げてください」


鷹野くんの長い指が、わたしのほおを、ゆるく擦り上げる。


「本河さん」

「た、鷹野くん、ちかい……」

「……ね、上げて」

「ちょ……あの、待って!待とう!?ほら今、タクシーのなかだし……!!」

「……じゃあ、信じてくれますか?」


もうどうすればいいかまったくわからず、パニック状態のまま、おそるおそる、鷹野くんを見る。

色素のうすい瞳のなかに、わたしの影がうつり込んでいる。

影だから、はっきりとはわからない。

でもたぶん、わたしは真っ赤で、今にも泣きそうな顔をしている。


「信じるって……な、なにを」

「俺が、本河さんのことを好きだって」

「ほ、ほんと待って!!待っ、」

「信じてくれたらやめます」

「~っ、信じる!!信じる、から……っ!!」


必死でそう口にすると、ふいに、鷹野くんの顔がほころんだ。

まるで花開くように、ふわりと、嬉しいという感情がにじむ笑顔を見せられ、たとえなんかじゃなく、本当に胸が痛くなる。

……鷹野くん、は。

ゆだった頭のなかで、わたしは思う。

鷹野くんは、やっぱり未知だ。

未知で、王子で、策士で……それから、嘘つきだ。

だって。


「…たか……っ、」


……信じたらやめるって、言ったくせに。






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