年下くんの電撃求愛
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『やっぱ俺、透子のこと好きだわー』


……久しぶりに、夢を見た。

夢を見ること自体が久々で、そこに元彼の達彦が出てくるのなんて、もう本当に、思い出せないほど久しぶりだった。

夢のなかの達彦は、やっぱりひょろ長くて、不健康そうな見た目をしていた。


『美人ってムダに気ぃ遣うしさー、やっぱ透子みたいな女が、ずっと一緒にいたい女なんだよなー』


よくよく考えればけっこう失礼なセリフだけれど、それを受けた夢のなかのわたしは、嬉しそうに笑っていた。

ニッと八重歯をむき出しにした達彦が、当然のように、わたしの手を取る。

そこで急に、ジジジ、と電球が切れかけるときの音がして、映像は荒ぶり、砂嵐になる。

場面が切り替わる。

薄暗い部屋。一人立ち尽くしたわたしは、携帯を耳に当てている。

その携帯が耳に伝えるのは、ツー、ツー……と連続する、無慈悲な不通音。

眠りながら、わたしは気づく。ああ、これは、わたしがフラれた場面なのだと。

そして、わたしは、あらためて思い知る。

“ 好き ”は、けっして永遠じゃないーーということを。


「〜うわっ……あっ、すみません!!」


午前7時40分すぎ。スーツにひっつめ髪、いつもの通勤スタイルを装備したわたしは、いつも利用する通勤電車に乗っていた。

唯一いつも通りでないのは、座席に座れていない、ということだ。

今日の車内は、日ごろの数倍混んでいた。

つり革も持てずに中途半端な位置で立っているわたしは、電車が揺れるたびにバランスを崩すことを繰り返している。

となりの人に寄りかかってしまい、謝るのも、さっきので2度目だった。

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