年下くんの電撃求愛
早朝から信号機故障のシステムトラブルが発覚したらしく、そのため、電車のダイヤは、大幅に乱れていた。
くわえて、土砂降りという悪天候なので、電車の利用人数が必然的に多くなるという二重苦。
なんだか今日は、ものすごくツイていなかった。
土砂降りと電車の遅れ以外にも、目覚ましの電池が切れていて寝坊しかけるし、前髪に究極におかしな寝癖がついていたし、家を出る間際にストッキングは伝線するし、道を歩けば、走ってきた車に水をかけられるし。それに。
……あんな夢を、見てしまうし。
電車を降り、職場に向かう道中。夢の内容を思い出すと、傘の柄をにぎる手に、自然と力が入った。
……なんだってわたしは今さら、達彦の夢なんて見たんだろう。べつに、これっぽっちも、未練なんてないのに。
それでも、思い出したくない苦いワンシーンを客観的に見せつけられてしまうと、胸がキシキシと痛む。
まるで、知らされているというか、念押しされているみたいだと思った。
彼とーー今、わたしの頭のなかの9割がたを占めている鷹野くんと、うまくいきっこないってことを。
『あなたが、好きです』
……先日の、吉島さん宅緊急訪問の一件からというもの。
鷹野くんはよりいっそう、真っすぐ気持ちを伝えてくるようになった。
たとえば、業務中。ふとした瞬間に目が合えば、すごく嬉しそうに、顔をほころばせてくる。
すれちがいざまに、だれにもわからないようにちょっと触れてきたりもする。いたずらっぽく、笑いながら。