年下くんの電撃求愛

周りに人がいないときには、砂糖のカタマリのような、甘い言葉をこぼしてくる。

わたしが忙しくしていたら、フォローしてくれたり、こっそり缶コーヒーやチョコレートを差し入れてくれたり。なんだか可愛いことまで、してくるわけで。


……ここまでストレートだと、もう、からかわれているだけだなんて思えない。


それに、正直……うん。ウソをついてもしょうがないから本音を言ってしまうと、わたしは、嬉しいのだ。

鷹野くんが好きの断片を示してくれるたび、わたしはどうしようもなく、嬉しいと思ってしまっているのだ。

わたしは確信している。このままでは確実に、鷹野くんを好きになってしまう。

だってそもそも、鷹野くんが本気でわたしにせまるなんて、石斧しか持たない縄文人に、最新兵器のミサイルを撃ち込むようなもの。敵いようがない。惹かれない方が、無理な話だ。

……でも、だめだ。

気持ちがぐらりと彼に傾きそうになるたびに、わたしは自分に、ストッパーをかけていた。

鷹野くんを好きになるのはだめだ。だめだだめだ絶対だめだ。こわいのだ。


「はあ……」


アスファルトをたたく雨にまぎれ込ませるように、わたしは長く、息をはいた。


……今、は。

今は、なにかしらの、なんだかとてつもない奇跡が起きて、鷹野くんは、わたしを好いてくれているかもしれない。

でも、本来なら彼は、よりどりみどりの選べる立場なはずだ。

鷹野くんが、ふと熱病からさめて、三十路の、なんの取り柄もないわたしに飽きてしまったときが、とてもこわい。

身の丈に合わない夢を見させられたあと、達彦のときのように、突然切り捨てられてしまったら?

……ああおそろしい。大けがどころじゃ済まない。粉砕骨折心破裂並みの、緊急手術レベルだ。

< 43 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop