年下くんの電撃求愛
周りに人がいないときには、砂糖のカタマリのような、甘い言葉をこぼしてくる。
わたしが忙しくしていたら、フォローしてくれたり、こっそり缶コーヒーやチョコレートを差し入れてくれたり。なんだか可愛いことまで、してくるわけで。
……ここまでストレートだと、もう、からかわれているだけだなんて思えない。
それに、正直……うん。ウソをついてもしょうがないから本音を言ってしまうと、わたしは、嬉しいのだ。
鷹野くんが好きの断片を示してくれるたび、わたしはどうしようもなく、嬉しいと思ってしまっているのだ。
わたしは確信している。このままでは確実に、鷹野くんを好きになってしまう。
だってそもそも、鷹野くんが本気でわたしにせまるなんて、石斧しか持たない縄文人に、最新兵器のミサイルを撃ち込むようなもの。敵いようがない。惹かれない方が、無理な話だ。
……でも、だめだ。
気持ちがぐらりと彼に傾きそうになるたびに、わたしは自分に、ストッパーをかけていた。
鷹野くんを好きになるのはだめだ。だめだだめだ絶対だめだ。こわいのだ。
「はあ……」
アスファルトをたたく雨にまぎれ込ませるように、わたしは長く、息をはいた。
……今、は。
今は、なにかしらの、なんだかとてつもない奇跡が起きて、鷹野くんは、わたしを好いてくれているかもしれない。
でも、本来なら彼は、よりどりみどりの選べる立場なはずだ。
鷹野くんが、ふと熱病からさめて、三十路の、なんの取り柄もないわたしに飽きてしまったときが、とてもこわい。
身の丈に合わない夢を見させられたあと、達彦のときのように、突然切り捨てられてしまったら?
……ああおそろしい。大けがどころじゃ済まない。粉砕骨折心破裂並みの、緊急手術レベルだ。