年下くんの電撃求愛

「なっ、なに」


警戒しながらたずねると、鷹野くんは笑みを崩さないまま、「はい?」と聞き返してくる。


「なんで、笑ってるの」

「え?……ああ」


鷹野くんの薄茶色の瞳が、わたしに向かって、やわらかくゆるむ。


「朝一から本河さんに会えたのが、嬉しくて」


ーーチン!!

彼の口から爆弾が投下されたところで、ちょうどエレベーターが降りてきたらしく、軽快な音が鳴った。

放心したわたしは、「どうぞ」と誘導されるがまま、鷹野くんと一緒に、せまい箱のなかに乗り込む。

せいぜい1メートル四方の面積のなかに、2人きり。え、ここは宇宙?無重力空間ですか?そうたずねたくなるほど、うまく息ができない。

酸素不足で、顔がどんどん熱くなっていく。そして。


「……ふ、本河さん」

「〜はい!?」

「食べてます、髪」


……鷹野くんは、本気で、わたしを殺しにかかる気なんだろうか。

なんの躊躇もなく、伸ばされた指。

その長い指でわたしのくちびるに触れ、上下に割り開き、鷹野くんは撫でるように、束になった髪を抜き取った。

そして、そのまま少しかがみ、わたしと目線を合わせると。


「……可愛い」


ものすごく愛おしいものを見るかのようなまなざしを向けて、トドメの台詞をのたまった。


「……っ、」


ーーチン!!

呼吸困難に陥りかけたところで、到着の音が鳴る。

フリーズしたわたしの回復を待つことなく、エレベーターのドアが開く。


「……本河さん?降りないんですか」

「あ……う、うん……〜わっ!?」

< 45 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop