年下くんの電撃求愛
ぎこちない動作で足を踏み出すと、段差も何もないところでつま先を引っ掛け、わたしは思いきり前につんのめった。
ばっと伸びてきた手。すばらしい反射神経でわたしを腕のなかにおさめた鷹野くんは、「大丈夫ですか」とわたしの耳に声を落とす。
「だ、だいじょぶ……ごめん……」
……大丈夫、では、なかった。
伝わってくる、鷹野くんの感触と熱に、わたしはもはや、発狂寸前だった。
まるで抱きしめられてるような過剰な錯覚に陥りながら、わたしはぎゅっと、痛みを感じるほど強く、目をつむった。
……だめだ。
これ以上接触してしまったら、ほんとに、もう、絶対にだめだ……!!
「本河の担当、鷹野と前山なー」
「え」
……だがしかし、だ。
同じ職場なだけでなく、わたしは一応、彼の指導者にあたる立場なわけで。
その日の業務後。支店長に呼ばれたと思ったら、新人の実技チェックの件で、鷹野くんを振り分けられてしまった。
実技チェックとは、シャンプーやケアを実際に我が身に行ってもらい、その評価や指導をするというものだ。
つまりそれは、カウンセリングルームという密室に、数十分も2人きりになれということだ。
……無理だ。
「し、支店長!あのー……わたしの担当、片桐さんと大谷くんじゃだめですかね?」
「は?俺の采配になんか文句あんのか」
「いやっ!そ、そういうわけじゃ、ないですけど……」
ゴリラ顔でにらんでくる支店長。
超絶怖い。でもここですんなり「了解でーす」なんて言ってしまったら、わたしには死が待っている。