年下くんの電撃求愛
鷹野くんにおちることは、もう恐怖のあまり、わたしのなかで死と同義語になっていた。
言い淀んで突っ立ったままのわたしに、支店長は怪訝な視線を向ける。そして、「……あのなぁ」と切り出した。
「まず、前山はこないだ問題起こしてんだから、ちゃんとお前が責任持って見るのが当然だろ」
「う……はい……」
「まあ、前山は一番の問題児であるとは思う。で、その分、負担の少ない鷹野がセット。なんの文句があるってんだ」
……はい、そうですね。おっしゃるとおりでございます。でも。
でもわたしの心境的に鷹野くんは一番強烈な負担なんですそこをなんとかお心変えていただけませんかもうゴリラなんてこっそり呼んだりしないから……!!
と、そんな長文を口にできるはずもなく、わたしはただ頭を垂れ、「文句ありません」と回答するしかなかった。
「よし。じゃあチェックリスト渡しとくから、今週中に」
「はあ……」
「業務後な。お前にも新人にも残業つけていいから」
「はあ……」
「つーか、鷹野は美容師資格もう取ってるから、ほんとは実技見なくてもいいくらいなんだけどな」
「はあ……えっ!?」
数秒遅れて、驚きの声が飛び出した。
はっと口をつぐんだあと、深く眉根を寄せる支店長に、わたしはおずおずとたずねる。
「え……あの……鷹野くんて、資格、もう取得してるんですか?」
「……は?なにお前、知らなかったの?」
ノーブヘアーでは、顧客の髪を切ったりセットしたりするため、社員はみな、入社後に通信で美容師資格を取ることが必須になっている。
新人は、これから業務と並行して、資格の勉強をしていかなければならない。