年下くんの電撃求愛
ただ、新人でも、もう資格を取っているという例外がある。それは。
「つか、美容師経験あるから、鷹野。専門出て、2年勤めてからうちに就職したんだよ」
わたしの予想と答え合わせをするかのように、支店長は、鷹野くんの意外な経歴を口にした。
……そう。美容師の専門学校出で、入社以前に働いた経験があるようなパターンだ。
知らなかった。まさか、鷹野くんがその類だったなんて。てっきり、大学を出たばかりなんだと思い込んでいた。
ここ最近の出来事で、鷹野くんのことをいろいろ知ったつもりでいたけれど……わたしはまだ、鷹野くんに関して、なにもわかっていないのかもしれないな。
そういや血液型、とか。誕生日とか。そういうパーソナルデータは、全然知らないし。
好きな食べ物、とかも。鷹野くんて、好き嫌いなさそうだけどな。
スーツ姿しか見たことがないけれど、休日は、どんな私服着てるんだろう。お洒落そうだよなぁ。
どうやって過ごしてるんだろう。髪は、どこで切ってるんだろう。
美容師を辞めて当社に入った経緯は、聞けば教えてくれるだろうか……って。
なに鷹野くんに対する質問リストみたいなの挙げちゃってるんだわたしばかなの……!!
「おい、本河」
「〜はあいっ!!」
頭が飛びそうになっていたところ、ドスの効いた声を落とされて、瞬時に我にかえる。
情景反射で姿勢を正したわたしに、支店長はにやり、含みを持たせた笑みを差し向けて、こう言った。
「……今日はもう一つ、お前に業務命令があんだよ」