年下くんの電撃求愛
「でも、大貫くんは褒めてたよ。本河ちゃんのこと」
森岡さんのグラスにもビールを注がせてもらい、小さく乾杯をしたとき、森岡さんがそう言った。
えっ、と固まるわたしに、森岡さんはもともと柔和なお顔をさらにゆるませて、会話を続ける。
「指導にも、自分の仕事にも手を抜かないって。仕事のやり方が丁寧だって。難しい顧客でも本河に任せておけば、フォローなしでいけるから助かるって、そう言ってた」
まさかまさかのお褒めの言葉に、わたしは目をまたたかせ、森岡さんがしゃべる合間合間に、たくさんの「えっ」を挟んでしまった。
支店長はいつも、わたしに厳しくあたる。怒鳴るかにらむか鼻を鳴らすか嘲笑されるか、その四つの態度しかとられていなかったので、わたしは本当に驚いた。
そんな風に思ってくれてたんだ、支店長。むしろ出来損ないと思われてて、嫌われているくらいだと思っていた。
うわ。ちょっと……いや、かなり嬉しくて、胸が熱くなってしまう。
「契約数も、抜きん出てるわけじゃないけど、毎月ムラなく取れてるみたいじゃない。それってすごいことだよ」
「う……いやほんとにまだ未熟なので、そんな誉め殺ししないでください……」
「はっは!謙虚なところもいいねえ。本河ちゃん、もしやる気があるなら、本部に推すよー?本部は開発にも携われるし、仕事としてものすごく幅が広がるから、やりがいがあると思うし」
「ほ、本部!?いやいやいやそんなめっそうもない……!!」
「まあ、ほんと仕事を頑張る気があるなら、いつでも協力するから。ほいほい、飲め飲めー」