年下くんの電撃求愛
自分の部屋の天井を見ながら愕然とした、あの瞬間の心境をまざまざと思い出し、苦い気持ちをぶり返していたときだった。
「ま、べつに飲むなとは言わねーけど、ほんとほどほどにはしとけな。今日は送迎人員いねーんだから」
支店長が、歌うような口調で、そんなことを言ってきた。
「送迎、人員……?」
首をかたむけたわたしに、お酒のせいかいつもより怖さを半減させた支店長も、ん?と首をかしげた。
「え……お前、それも覚えてねーのか?」
「な、なにを……」
「〜ぶ……っ、ぶわっはっは!!マジか!!ウケるなー!!」
「っ、ウケ……いや、あの、ほんと何のことですか!?」
前のめりになり、わたしは必死に支店長に詰め寄る。
な、なに!?送迎って。わたし、自分一人で帰ったんじゃなかったの!?
なんだかとてつもなく、嫌な予感がした。
もう一度振り返ろう。今日のわたしは、かなり運が悪い。
目覚ましの電池が切れていて寝坊しかけるし、ひどい寝ぐせがついた前髪には苦労させられたし、車に泥水をかけられ、脚をびしょ濡れにされたし、支店長に突然、交流会に連れてこられてしまったし。
けれど、運の悪さとか、そういうものじゃなくて。なにかもっととんでもないことが、今明かされようとしている気がする。ねえ、どうして。
『……可愛いですよ、あなたは』
……どうして今、最近は抑え込めていたはずの、例の痛い妄想が、頭をよぎるの。
「鷹野だよ」
支店長が口にした、彼の名前。
いっしょくたに込み上げた、驚きと、なぜ、という疑問と、嘘でしょう、という信じられない気持ち。
なのに、まるでパズルのピースがぴたりとはまったかのように、わたしは心のどこかで、ああ、と思った。
「鷹野が、つぶれたお前を送っていったんだよ」