年下くんの電撃求愛
そう続けると、鷹野くんの顔に浮かんでいた笑みが、すっと引くのがわかった。
達彦のことは、もう意識にのぼらせたくない出来事だけれど……それでも曖昧にしておきたくないというか、ちゃんと、鷹野くんに謝っておきたかった。
今さら知らされてしまった裏切りの事実は、本当に衝撃的だった。正直、ものすごくショックだった。
もし鷹野くんがいなかったら、わたしはあの場で、みっともなく泣いてしまっていたかもしれない。
ここに無事帰って来られていたかも怪しいし、帰って来たとしても、落ち込んで、1人ベッドの上で丸まって死んでいたと思う。
でも、鷹野くんがかばってくれたから……自分でもおどろくほど気持ちが沈んでいないし、わたしは今、泣かないでいられるんだ。
「いえ……あれは、俺が嫌だっただけです」
見つめる先で、鷹野くんが首を横に振る。
伏せられたまつげの下、鷹野くんの瞳には、悔しさが滲んでいた。
「嫌だったんです。あんなクズの前に、本河さんを数秒でも置いておくのが」
「く、クズ……」
「なんであんなのと付き合ってたんですか気の迷いですか」
「な、なんでかな……」
「迷いすぎです。もったいなさすぎてハゲそうです俺が」
「た、鷹野くん……」
「ほんとは今すぐ本河さんの全身くまなく消毒したいんですけど脱がせてもいいですか。着替えっていう程で」
「!?……な、なんかすごいこと言ってるよね?」
「ほんと、何回も殴ってやろうと思いました。あーもう……っ、」
瞳だけでなく、悔しいという感情を顔全体に宿らせて、鷹野くんは吐息混じりに言った。