年下くんの電撃求愛
「ば、ばかって……」
「状況に流されてそういうこと、言わないでください」
トーンの低くなった声。わたしのくちびるにかけられていた親指が、離れていく。
「……鷹野くん」
「俺は……あなたのことが、本気で好きなんです。そんな、雰囲気で受け入れるようなこと、しないでください」
「た……鷹野くん……ちが、」
「もう寝てください、本河さん」
鷹野くんの視線までが、わたしから離れた。
目を伏せ、苦虫を噛み潰したような表情で、鷹野くんは言う。
「変な気起こさないうちに、俺、帰りますから。何かあったら連絡下さい、そしたらすぐーー」
「帰らないで……っ、」
立ち上がろうとした鷹野くんの、シャツの袖を、つかんでいた。
とっさの行動だった。帰らないで、と言った声は必死だったし、ひっくり返っていた。
恥ずかしさが、ものすごい勢いで後追いしてくる。
袖をつかまえたまま口を一文字に結ぶわたしに、鷹野くんは、少し眉をひそめて、苦しげに言った。
「……そんな可愛いこと、しないでください」
「……っ、」
「止められなくなったら、どうしてくれるんですか」
深みのある声に鼓膜を震わされ、かあっと、ほおが一気に火照る。
でも、手は離さなかった。
離さずに、わたしはしっかりと、鷹野くんを見つめ直した。
「……鷹野くん」
名前を、呼ぶ。
「鷹野くん、忘れててごめんね」
ぎゅっと袖をにぎって、言う。
「交流会の日も……わたしをこうして、送ってくれたんだよね?」
さんざん言いよどんでいた言葉が、今はすっと、自然に出てきた。