年下くんの電撃求愛
「あ、あの……」
「どうして」
そのとき、思いつめたような声が、鷹野くんの口からこぼれた。
「……どうして諦めた頃に、聞くんですか」
「え……」
「もう言わないでおこうって……なのに……」
深い息をはいて、鷹野くんは、まるで苦渋の選択を迫られている人間のように目を伏せた。
予想外の、反応だった。
いつもどこか余裕を保っている彼が、こんなにも逡巡しているそぶりを、わたしは、はじめて見た。
「……鷹野、くん?」
ベッドに寝転んだ状態で、様子をうかがうように、鷹野くんの顔を見上げる。
「も、もしかしてわたし……鷹野くんに、そんなおそろしいことしたの……?」
鷹野くんは、黙っている。
無理やりくちびるを奪ったんじゃ、とか。鷹野くんを強引に押し倒したんじゃ、とか。
昨夜繰り広げていた想像が、ぐるぐると頭を回りはじめ、焦ったわたしは、思わず声を大きくしていた。
「ご……ごめんねっ!?ごめん……っ、あの……何したかわからないけど、ちゃんと責任はとるっていうか……!!いや、責任とるっていうのはおかしいんだけど、なんていうか、その……」
「本河さん」
鷹野くんが、わたしの名前を呼んだ。
そして、わたしの寝ているベッドに突っ伏し、ぽすんと顔を預けた。
「……違うんです」
「えっ」
「あなたは何もしてません。ただ、俺が……」
そこまで言って、鷹野くんは言葉を止めてしまった。
ベッドに伏せられているから、鷹野くんが今、どんな表情をしているのかわからない。