黒薔薇
彼女の声がした。
「え?」
村田の動きが止まった。
村田の背中越しには、桜田がいた。
「何してるの?」
桜田はいつもと同じ微笑だったが、なんだか裏門の暗さのおかげか恐怖を感じた。
「桜田...」
「桜田さん」
桜田は何も言わずに、村田に近づく。
村田はただ後ずさる。
「...何してるの?」
再び桜田が問うと、村田の手からカッターナイフがすり落ちた。
からん...
「行こう。長野くん」
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