黒薔薇
桜田が僕の手を取り、うながす。
「まってっ...行かないで!」
がくっと膝から村田が崩れ落ちる。
「...どうして。桜田さん。...どうして僕じゃダメなんだ...置いていかないで...」
何度もどうしてとつぶやき涙を流した。
最初、桜田は無視するだろうと思った。
だって、彼女はいつも気まぐれで興味がないことには無関心だから。
でも、今日は村田に振り向いた。
僕から離れると村田に合わせて、しゃがみ込む。
そして、何かを村田の耳元でつぶやいた。
「...うん。わかったよ」
村田があっさり納得したように立ち上がり、僕の横を通り過ぎていった。