黒薔薇
僕は、ずっと気になっていたことを桜田に聞いた。
「ねえ。桜田。あのとき、村田から僕を助けてくれたとき...」
「うん」
桜田は僕の顔を見なかった。
「村田の耳元で...何を言ったの?」
しばらく返事はなかった。
僕も正直聞くのは怖かった。もし、桜田が村田を自殺に追い込んだとしたら...。
どうしてもそう考えてしまう。
でも、もしそうなら僕に非がある。
だって、桜田は僕を助けようとしたのであって元はといえば僕が村田のことを考えていなかったから起きたことだ。
「先に行って待ってて」
「え?」
「”先に行って待ってて”そういったの」
それじゃまるで...。
ちゃりっ
桜田が僕の手首にある薔薇のブレスレットに触れた。
ほんとうに、大事そうに愛おしそうに。