黒薔薇




一度、私を見捨てた相良が走って戻ってきたのだ。




あっという間に私のところまで来ると、荷物をほとんど持ち上げて一言だけ言った。




「行くぞ」




不良のくせにヒーローみたいに、私の前に現れた相良を見て安心したのか涙腺が緩んだ。




「泣くな。うぜえ。」




「だって...だってえ...相良が...」




「来てやっただろ。泣くな」




なんだあ。相良って優しいじゃん。




それから、私の家まで送ってくれた。





ママは不良の相良を見て驚いたけれども、きちんとお礼を言った。





相良は、何も言わず去っていった。





私が相良を好きになるには十分な時間だった。







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