黒薔薇
桜田という言葉を発した僕に初めて相良君が目を向けた。
「ああ。もちろんお前のこともな。長野」
柳沢さんと話すのと違って、僕には明らかに敵意を示してくる相良君。
前の僕なら、恐怖で何も言えなかっただろう。
「相良君。桜田はどこ?」
声は震えなかった。
言うと、相良君が『涼子』と呼んだ。
すると、僕と柳沢さんの後ろの方からよく知った声が聞こえた。
「こんばんは。長野くん。刑事さん」
コツコツと靴のなる音。
僕たちの脇を素通りすると差し出した相良君の手を取って、桜田はソファーに座った。
そして当然のように、相良君がその隣にすわり桜田の肩を抱いた。
桜田が手を軽く上げると中毒者ではないメンバーが二人分の椅子を持ってきてソファーの向かいに置く。