黒薔薇
「いくらなんでもっ!こんなことしなくてもいいじゃないか。これじゃ、君だってクレイムとやっていることはそう変わらないよ!!」
「一緒にしないでっ」
初めて桜田が表情を崩した。
「同じだよ!弱いものいじめとそう変わらないよ!いじめられていた僕にはよくわかる!強者の恐怖や痛み!」
「長野くん、言ったでしょ。黒は白にはなれないのよ。私の邪魔をしないでっ」
桜田の手首をつかんでいる僕の手を離そうともがく、でも微動だにしない。
こんなに、桜田の手首は細かっただろうか。
「ちがう!君は殺戮者なんかじゃない。桜田涼子。君は一人の男を普通に愛していた普通の女の子」
「やめてっ。思い出させないで!」
視界のすみに、相良君に押し倒されている柳沢さんが目に入った。
「っぐ!長野!!はやく涼子の目を覚まさせろ!!」
「うるせえ!涼子に変なこと吹き込むんじゃねえ。ぶっ殺すぞ!!」