黒薔薇
恋愛は人を変えてしまうものだ。
「愛していた?冬樹を」
僕は聞く。
「愛していたよ。誰よりも」
桜田ははっきりと言った。
「僕も桜田が好きだ。たとえ僕の兄を好きでいても。」
いつもの調子で桜田は花のように笑った。
「うん。知ってた」
そしてふと、真面目な顔をした。
「私は罪を償うよ。許されることではないかもしれないけれど。わたしの罪をひとつひとつ自分自身で」
僕も真面目な顔でうなずいた。
「待っているよ。何年先も桜田が僕に会いに来てくれるまで。ずっとずっと待ってる」
そして優しく抱きしめる。
いつもより薔薇の香りを近くに感じられた。
少し驚いた顔をしたけれど、とてもうれしそうに彼女は笑った。
もう演技ではない本当の笑顔で。