黒薔薇



「ちっ。しらみつぶしに調べてみるか」






頬の傷に触る。





あいつを思い出すよ。





これは、ある少女を助けた時にできたものだ。






ちょうど10年前くらいか...父親に襲われ、母親に裏切られ殺されかけていた少女。






泣き声ひとつあげず、ただ無表情で自分を殺そうとしていた母親を見つめていた。






「なぜ泣かない?怖くはないのか?母親が自分を殺そうとしたんだぞ」





小学生くらいの子供には酷だろう言葉だったはず。






だが、そう聞いた俺に向かって少女は微笑んだ。








《ちがうよ。刑事さん。殺そうとしたのはわたし。わたしがママを殺そうとしたの。》







は?こいつなにを言っていやがる







《ママはねパパに襲われるわたしを助けてくれなかったの。ママ助けて。ママ助けてって何回も言ったのに》








一瞬普通の子供のような寂しい表情をしたと思ったとたんこんどは急に大人びた顔をした。







《そのときからねママはね。わたしにとってごみ虫になったの。だからわたし虫を殺そうとしたのよ》







ふふっとまるでおもちゃで遊んでいるように楽しく笑った。







「てめえ!仮にも親に向かってなんてこと言いやがる!!」






《どうして?ゴキブリは殺していいのに、ごみ虫のママは殺しちゃいけないの?》















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