黒薔薇
「見てたの?」
「うわっ!」
急に後ろから声をかけられて、僕は前のめりになり無様にも何も無いところで転んだ。
カランという音と共に、僕のお弁当も無様にぶちまけられた。
あ…。
お弁当はもう助からなそうだ…。
僕は目の前に立っている人物を見上げた。
「桜田涼子…」
名前を呼ぶと、ふふっと彼女は静かに笑った。
「なんでフルネームなの。変なの」
桜田はポケットからハンカチを取り出す。
そして僕のぶちまけられたお弁当の中身をハンカチを使って箱に詰めた。
「ごめんね。驚くかなーと思って。」
僕に手を差し出し立たせると、お弁当をその手にのせた。