ブラックバカラをあなたへ
私は、どれだけの人を殺してきたのだろう…




その中の大半の人は、真っ当な人生を送ってきていない人達だったのだけれど。




でも、それでも、彼らにだって大切に思ってる人、大切に思ってくれてる人がいたかもしれない。




私は、そんな人達の幸せを奪ってきた。




思い出すのは、彼らの悲痛な叫びや、怯えた顔ではなかった。




初めて人を殺した日。




私に怯えながらも、赤子を守る母親。




私はその母親を殺したというのに、赤子は無邪気に笑う。




何も知らない…純粋な笑顔。




こんな私にも笑いかけてくれる、小さな命。




私は、そんな命すらも、守るどころか奪ってしまった…




そんな私が、今もこうしてのうのうと生きている。




誰が許してくれようか。




こんな醜い私が、生きてもいいと、誰が言ってくれようか。




あぁ…でも、一人だけいたな。




そんな彼も、もう帰らぬ人となったのだけれど。
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