ブラックバカラをあなたへ
「そうですね。私達には、まだやるべきことがあります」




優奈は、零れそうな涙をぬぐって、澄んだ瞳で私を見つめる。




みんなも涙を拭うと、覚悟を決めた目になったのがわかった。




「仲葉さん、はい」




そして、いつもの優しい笑顔を浮かべて、優奈は、仲葉にハンカチと買ってきた水を渡す。




ありがとう、そう言って仲葉はそれを受け取って、ハンカチで目を覆った後に、水を少し飲む。




「…ごめんなさい。取り乱しちゃって」




仲葉の顔はいつもの無表情に戻っていた。




でも、なんとなく、これからは仲葉の表情も読み取れそうな気がしていた。




そして、みんなとの気持ちも一つになった気がした。




「ねぇ、久しぶりに、空き教室行ってみない?…今なら行けそうな気がするんだ」




ね?と、燈が微笑む。




「そうね。今なら、私も行けそう!やっぱ、空き教室がいっちばんゲームが捗るのよねー」




「ほんっと、春ちゃんは頭の中ゲームばっかなんだから!」




「年中、お花畑のあんたに言われたくないわよ!」




よかった。




いつものみんなに戻ってる。




明るさを取り戻したみんなを見て、私は微笑んだ。




空き教室、かぁ。




行くのは、あの日以来か。




あの空き教室にも、彼らとの思い出が沢山詰まっていて。




まだ、彼らの死を受けとめきれていなかった私達は、そんな場所には辛すぎて無意識に、いや、本能的に近寄らなかった。




でも、今は違う。




なんでかは分からないけれど、多分、覚悟が確かなものになったから。




私達は、あの日以来行っていない、空き教室へと向かった。
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