ブラックバカラをあなたへ
テストまで1ヶ月を切ったということもあり、みんなあまりサボることをしなくなった。
特に燈は勉強熱心で、ほとんどの授業にちゃんと出ている。
多分、一番足を引っ張るからという思いがあるのだろう。
優奈や仲葉は元々あまりサボる人ではなく、テストの順位もいつも2位と3位だった。
春実は、授業に出ても寝ているだけなので、あまり空き教室でサボるのと変わらない。
ただ彼女は、1週間ほど前になると勉強しだすタイプで、いつも平均よりは上の点数をたたき出す。
そんな春実に、燈はいつも悔しそうにしている。
かく言う私は、授業に出ても出なくても教科書を見ればある程度の知識は得られるので、一番サボっていた。
今日も一人で、私は空き教室にいた。
特にすることもないので、いつも通りイヤホンで音楽を聴く。
昼休みが終わったこの時間は、妙な静けさがあった。
頬杖をつき、校庭を眺める。
体育の授業中なのだろう、どこかのクラスが、サッカーをしていた。
そうだった、彼らは体育の授業だけはちゃんと出てたな。
楽しそうにやってたっけ。
それも、もう、出来ないんだね。
「ごめんね…」
…やめよう。
そうやって感傷に浸るのは。
そう思い、私は机に突っ伏す。
何分かそうしているうちに、眠気が襲ってきて、私はいつの間にか眠りに落ちていた。
『この曲、俺好きなんだ!葉音も聴いてみてよ』
『聴く聴く!』
この光景、知ってる。
いつもこんな風に、イヤホンをつけて一緒に聴いていた。
『なんか、切ないけど、綺麗な歌だね。私も好きだな、この曲』
『葉音ならそう言うと思った』
そう言って笑った彼の顔が、あまりにも綺麗で。
そう、私は涙を流した。
この世界は綺麗なものばかりなんだって、私に思わせてくれた。
『葉音、どうしたの?大丈夫?』
『あ、うん、大丈夫!なんか、感動しちゃって、ごめんね…泣いたりして』
『ううん、いいよ。葉音が大丈夫なら、それでいい』
彼の手が頬に触れる。
とても暖かくて、安らぐ、彼の手。
『ねえ、雅伊斗』
『ん?』
だめ。
言っちゃだめ。
『私たち、』
やだ。
聞きたくない。
それ以上言わないで。
そんな幸せそうな顔をしないで。
『ずっと、一緒にいようねーーーー』
「ーーーっ!!っはぁ…はぁ…」
頬に冷たいものが流れる。
汗でへばりついている髪。
「もう…ほんと…笑える」
私はイヤホンを投げつける。
こんな曲聴いたまま眠ったから、あんな夢見てしまった。
逃げ出してしまいたい。
全てを忘れ、全て無かったことにして、私という存在を消してしまいたい。
どうして、あんな幸せそうな顔で、あんな無知な発言を出来たのだ。
自分の立場を分かっていながら、あんな確証のない未来の話を。
私はどうして…
こぼれる涙を拭って、前を見ると、そこには黒板の文字。
私は無意識にそこへ向かう。
『愛してる』
指でそっと触れると、粉がハラハラと落ちていく。
命って本当に、容易く、消えちゃうものだね。
ねえ、潤ちゃん。
あなたは、これを宝物って言ってくれたけれど。
私はそれを壊しちゃったよ。
壊したら、ちゃんと捨てなきゃいけないのに、その勇気が私にはないの。
ねえ、私は、一体、どうすればいいのかな…
特に燈は勉強熱心で、ほとんどの授業にちゃんと出ている。
多分、一番足を引っ張るからという思いがあるのだろう。
優奈や仲葉は元々あまりサボる人ではなく、テストの順位もいつも2位と3位だった。
春実は、授業に出ても寝ているだけなので、あまり空き教室でサボるのと変わらない。
ただ彼女は、1週間ほど前になると勉強しだすタイプで、いつも平均よりは上の点数をたたき出す。
そんな春実に、燈はいつも悔しそうにしている。
かく言う私は、授業に出ても出なくても教科書を見ればある程度の知識は得られるので、一番サボっていた。
今日も一人で、私は空き教室にいた。
特にすることもないので、いつも通りイヤホンで音楽を聴く。
昼休みが終わったこの時間は、妙な静けさがあった。
頬杖をつき、校庭を眺める。
体育の授業中なのだろう、どこかのクラスが、サッカーをしていた。
そうだった、彼らは体育の授業だけはちゃんと出てたな。
楽しそうにやってたっけ。
それも、もう、出来ないんだね。
「ごめんね…」
…やめよう。
そうやって感傷に浸るのは。
そう思い、私は机に突っ伏す。
何分かそうしているうちに、眠気が襲ってきて、私はいつの間にか眠りに落ちていた。
『この曲、俺好きなんだ!葉音も聴いてみてよ』
『聴く聴く!』
この光景、知ってる。
いつもこんな風に、イヤホンをつけて一緒に聴いていた。
『なんか、切ないけど、綺麗な歌だね。私も好きだな、この曲』
『葉音ならそう言うと思った』
そう言って笑った彼の顔が、あまりにも綺麗で。
そう、私は涙を流した。
この世界は綺麗なものばかりなんだって、私に思わせてくれた。
『葉音、どうしたの?大丈夫?』
『あ、うん、大丈夫!なんか、感動しちゃって、ごめんね…泣いたりして』
『ううん、いいよ。葉音が大丈夫なら、それでいい』
彼の手が頬に触れる。
とても暖かくて、安らぐ、彼の手。
『ねえ、雅伊斗』
『ん?』
だめ。
言っちゃだめ。
『私たち、』
やだ。
聞きたくない。
それ以上言わないで。
そんな幸せそうな顔をしないで。
『ずっと、一緒にいようねーーーー』
「ーーーっ!!っはぁ…はぁ…」
頬に冷たいものが流れる。
汗でへばりついている髪。
「もう…ほんと…笑える」
私はイヤホンを投げつける。
こんな曲聴いたまま眠ったから、あんな夢見てしまった。
逃げ出してしまいたい。
全てを忘れ、全て無かったことにして、私という存在を消してしまいたい。
どうして、あんな幸せそうな顔で、あんな無知な発言を出来たのだ。
自分の立場を分かっていながら、あんな確証のない未来の話を。
私はどうして…
こぼれる涙を拭って、前を見ると、そこには黒板の文字。
私は無意識にそこへ向かう。
『愛してる』
指でそっと触れると、粉がハラハラと落ちていく。
命って本当に、容易く、消えちゃうものだね。
ねえ、潤ちゃん。
あなたは、これを宝物って言ってくれたけれど。
私はそれを壊しちゃったよ。
壊したら、ちゃんと捨てなきゃいけないのに、その勇気が私にはないの。
ねえ、私は、一体、どうすればいいのかな…