ブラックバカラをあなたへ
碧斗side




昼飯を食べ終えた俺は、なんとなく一人で、空き教室へと向かった。




最近、あの女共はあまり教室には来なくなった。




多分、テストが近いせいだろう。




あいつらの実力がどれほどかは知らないが、今までの結果では1位、2位、3位と、あいつらの中の三人が独占していたと、咲満が言っていた。




そろそろ俺らも本腰をいれなければならない頃合か。




教室が近くなっても、話し声は聞こえないため、あいつらは来ていないのだろう。




そう思って、ドアを開けると、一人の女が目に入る。




庭造院葉音。




大層な名前をしているが、ただ威勢のいいやつ、という印象しかない。




寝てるようだし、無視だな。




そう思い、俺は黒板の方に目をやる。




『世界一最強』




『仲間』




これはきっと、先代達が書いたもの。




彼らの、大切な思い出。




彼らはここで、どんな学校生活を送ってきたのか。




毎日、俺らに楽しそうに教えてくれた。




そして、その話には絶対、彼女達がいた。




名前や素性は絶対明かしてくれなかったが、今になって、聞いておくべきだったと後悔する。




この黒板には先代達の文字だけではなく、彼女達が書いたのであろう文字もある。




なあ、先代達が消えた理由、あなた達なら知ってるんだろう。




あの日、何があったのか、教えてくれよ。




このままじゃ、俺達も報われねえんだ。




前に進めねえままなんだよ。




「…め…」




俺がずっと突っ立ったまま黒板を見ていると、葉音の声が聞こえた。




起きたか、そう思って、あいつの方を見るが、どうやらまだ寝ているみたいだ。




「だ…め…」




魘されている?




苦しそうに息をする葉音は、目に涙をため、うっすらと汗をかいている。




魘されていようが、俺には関係ないことだと思い、屋上に戻ろうと思ったが、




「か…いと…っ」




その声に俺は立ち止まった。




震える、小さな声だったが、俺には確かに聞こえた。




かいとーーー。




「なんで…お前がその名前を…っ」




雅伊斗、それは俺たちの元皇の名前。




消えた俺たちの先代。




俺を救ってくれた人。




俺は静かに教室を出た。




なあ、お前達がやっぱり、先代たちの…




そこで考えるのをやめる。




俺はあの日の真実を知りたい。




そのためにここへ来た。




先代達が愛していた彼女達を探す。




それが、俺たちの唯一の希望だった。




でも、それを認めたくない自分もいた。




俺たちを救ってくれたあの人達を、俺たちで救いたかった。




それなのに、あの人達の心を癒したのは俺たちではなかった。




その事実が、嬉しいはずなのに、悔しくて、寂しくて、憎い。




俺はこの気持ちをどう整理したらいいんだ。




『俺も、愛してる』




黒板に書かれたあの文字が、頭にこびりついて離れない。




碧斗side end
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