ブラックバカラをあなたへ
シャシャと、幹部室に文字を書く音だけがする。




放課後、潤ちゃんを迎えに行って、倉庫へとやってきた。




メンバーのみんなと話したあと、私と他の幹部だけで、勉強を始めた。




潤ちゃんは、学年が違うということもあって、他の子達と一緒にいる。




「はーちゃん、ここの問題ってどうやって解いたらいいの?」




「ここは、この公式を使って、こう」




私は主に、燈の先生役をやっている。




「なあ、あいつらの実力ってどんなもんなんだろうな」




春実は一番最初に、めんどくさいからとリタイアし、ゲームをしながらそう言った。




「さあ、私は存じ上げませんが、舐めてかかると痛い目みそうてすね」




優奈がペンを走らせながらそう言う。




遠回しに、春実勉強しろと言っているのだろう。




そんなこと知ってか知らずか、春実の手は一向にゲーム機から離れない。




「燈、もっと頑張る!」




「燈さんは、本当に勉強熱心で、見直しますわ」




優奈が燈の頭を撫でると、燈は嬉しそうに頬を緩めてえへへと笑う。




そんな光景が微笑ましくて、私もついつい笑みがこぼれる。




それはそうと、あいつらの実力ね〜。




碧斗と咲満が同じA組なのは、まあ納得するけど、一番勉強出来なさそうな結我もA組なんて、人は見かけによらないとはこの事だ。




そういや、あいつらって元々どこの高校にいたんだろう。




なんて考えていると、一つ思い出したことがあった。




「三北|《みほく》高校」




私がそう呟くと、




「その高校がどうかした〜?」




と燈が聞く。




「いやさ、去年、メンバーの子達が言ってたんだよね。皇夜の新しい幹部が、三北高校の奴らだって」




「そっか、三北高って、皇夜のメンバー多いもんね」




燈の言う通り、三北高校は皇夜のメンバーが大半を占めている。




私たちが通っている茉南|《まなん》高校よりも不良校で有名だ。




茉南高校は不良校ではあるが、あまり族に入っている人達は少ない。




一方、三北高校は皇夜を始め、他の族に入っている生徒もいるため抗争が耐えないと、そこに通ってるメンバーから聞いたことがあった。




「そんな所から、この学校のA組に入れたってことは、侮れない相手ということね」




仲葉も数学の復習をしているのだろう、問題を解きながらそう告げる。




「とにかく、私たちは最善を尽くすまでです。ねえ、春実さん?」




いつまでも勉強を再開しない春実に痺れを切らしたのだろう、優奈はあの逆らえない微笑みを春実に向ける。




「あ、その、はい…最善を尽くします」




春実はゲームの電源を切り、開きっぱなしだった古典の教科書を読み始めた。




やっぱり優奈には誰も逆らえないということなのだ。
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