ブラックバカラをあなたへ

あの後一度解散し、潤ちゃんを迎えに行って夕飯を食べてから、倉庫へと向かった。




「もう少しで夏休みだね！」




幹部室で、各々過ごしていたら、突然燈がそう言った。




「そうだね〜。今年は何する〜？」




春実がゲームをしながらそう聞く。




私たちの夏休みは、ほとんど毎日倉庫で過ごしていた。




時々、海へ行ったり、みんなで買い物したり、バーベキューしたり、遊園地に行ったりと、女子高生のような行事も楽しんでいた。




多分、今年もそんな夏休みになるのだろう。




「去年の夏はすごく楽しかったですわね…」




ポツリ、呟くように優奈がこぼす。




そんなことを優奈が言うのは初めてだった。




「ゆーちゃん、どうしたの…？」




燈が心配そうに優奈を見つめる。




ゲームをしていた春実も、本を読んでいた仲葉も優奈の方を見て動かない。




「あの夏休みが、私にとって一番楽しい夏休みだったんです。だから、もう、みんなと遊べないと思うと……分かっているつもりだったのに…何故でしょう。急に寂しく思えてきて…」




優奈の目が潤む。




そこにいつもの優奈はいなかった。




凛としている彼女ではなく、1人の少女がそこにいた。




「私も、あの夏休みが一番楽しかったな〜…」




春実が力なく笑う。




「…優奈。私もすごく寂しいよ。彼らに、彼に、会いたいよね。でも、叶わない望みだもんね。その事実がどうしても受け止めきれないんだよ。




一人だと、逃げ出しそうになっちゃう。でも、ここにはみんながいる。私と同じ気持ちをもったみんながいる。だから、一緒に苦しもう。我慢しなくていいんだよ」




私は優奈をそっと抱きしめる。




「優奈、あなたは強いけれど、自分を傷つける強さはいらないわ。せめて、私たちの前では痛みを見せて」




そう言って仲葉が優奈の手を握る。




優奈、私たちはあの日、目の前で彼らを失った。




それは夢のような現実で、物語のような悲劇で、毎日が悲しくて、寂しくて、苦しくて、辛くて。




幸せを望むのが怖い。




みんなそんな気持ちを抱えて生きてる。




だから、無理して、強がらないで。




笑わなくていい。




私はただ、優奈が、みんなが生きてくれさえいればそれでいいんだよ。