ブラックバカラをあなたへ
しんみりとした空気になってしまったが、気を取り直して夏休みの計画を立てることにした。




あーだこーだとみんなで意見を出し、ある程度のスケジュールが決まった頃、幹部室のドアをノックする音がした。




私が開けにいくと、潤ちゃんがいた。




「すみません、みなさんにお話したいことがありまして。今お時間、大丈夫でしょうか?」




上目遣いで、首を傾げる潤ちゃんを私は無言でなでなでする。




可愛すぎて鼻血もんだ〜。




「葉音さん、潤さんが困っていますわ」




なぜ撫でられているのか分からない潤ちゃんは、目をキョロキョロさせて眉を下に下げている。




その顔がまた、たまらなく可愛すぎて。




やめられない!




「葉音、いい加減にしなさい」




そう言って仲葉に引き剥がされる。




「だってー!潤ちゃんが可愛いのがいけないんだもんっ!」




そう講義するけれど、仲葉は私の首根っこを掴んだまま離そうとしない。




地味に苦しい…




「ごめんなさいね、潤さん。葉音さんのことはお気になさらず、こちらに座って」




優奈が、仲葉と燈の間に薦める。




失礼しますと言って、潤ちゃんがちょこんとそこに座った。




仲葉に解放された私も、自分の椅子に座る。




「それで、話したいことって?」




燈が潤ちゃんの顔を覗きながらそう聞く。




「私、夏休みになったら、家に帰ろうと思うんです」




そう言った潤ちゃんの目には、闘志のような熱い何かを秘めていた。




「私、弱い自分が大嫌いでした。親の言いなりで、家も学校も窮屈で。そして、それを変えられない自分が大嫌いでした」




潤ちゃんの言葉にみんなが耳を傾ける。




「でも、みなさんと過ごすうちに思ったんです。自由は自分で手に入れるものなんだって。変えられないんじゃなくて、私は変えようとしなかった。両親が怖くて、なにも出来なかった。ただ諦めてるだけなんだって気づいたんです。




このBlackQueenには、私より辛い経験をした子達がたくさんいました。でも、みんな諦めずに、そんな過去を乗り越えようとしていて。私には、みんながすごく輝いて見えました。そして、勇気を貰いました。




だから私は、なりたい私になろうと思います」
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