ブラックバカラをあなたへ
『優奈、大丈夫?』




朝、私がカーディガンを着て、公園に着くなり、葉音さんにそう聞かれた。




みんなは、私の事情を知っていて、痣を隠すために長袖を着ていると、いつも心配そうにする。




『学校着いたら、保健室行きましょう』




仲葉さんがそう提案してくれるけれど、私は首を振る。




『そこまで痣になっていないので、大丈夫です。心配してくださってありがとうございます』




安心させるようにそう言ったけれど、みんなの暗い顔が晴れることはなかった。




『さあ、早く学校へ行きましょう』




この空気を打ち切りたくて、私は先に学校への道に向かった。




教室に着くと、廻さんの姿が見えたので、挨拶をする。




『カーディガン』




そう、廻さんに言われたので、どう理由を付けようか考える。




もう初夏だというのに、長袖を着ているのが不思議なのだろう。




『少し体調が優れなくて』




そう言って私は、自分の席へ向かう。




廻さんにはこの事、知られたくない。




きっと、彼のことだから、心配しちゃうもの。




彼には心配そうな顔をさせたくない。




幸いにも、弟は私の顔を傷つけることはない。




両親に知られたくないのだろう。




良家の息子が暴力だなんて、恥晒しもいいとこよね。




なんて、私が言えたことではないのだけれど。




今日はどうも元気が出ない。




廻さんがいるのだから、しっかりしないといけないのに。




『はぁ…』




と溜め息が零れた。
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