ブラックバカラをあなたへ
放課後、いつものようにみんなで帰ろうとしていた。




『優奈』




けれど、玄関先で廻さんに呼び止められる。




振り向いて、彼の方を見るけれど、彼は黙ったまま。




どうしたのかしら?




そう思って、声を掛けようとすると、彼がいきなり私の手を取り、そのまま歩き出す。




『あ、あの…廻さん?』




私が戸惑っていると、後ろから、『またね〜』とみんなの挨拶が聞こえる。




『あの、どこへ向かっているんですか?』




『俺の家だ』




淡々と彼は答える。




二人で一緒にいれるのは嬉しいけれど、今日は嫌だった。




きっと、二人きりになると、私は弱さを見せてしまう。




彼に甘えてしまう。




そう思うと怖くて。




『すみませんが、今日は用事が…』




そう言ってはみたけれど、彼の足が止まることはない。




どうしたらいいの?




そう思案しているうちに、いつの間にか彼の家に着いてしまっていた。




『あの、本当に今日は…』




『いいから入れ』




そう言った彼の顔は、何故か怒っているように見えた。




私は結局、彼に言われるがまま、家に入った。




今日は少しお話して、すぐに帰ろう。




そう心の中で誓う。




靴を脱ぎ、彼とリビングへ向かう。




前を歩いていた彼が、急に止まったと思ったら、




『脱げ』




そんなことを言うものだから、私の頭は一瞬ショートする。




『なっ、なななな何を仰ってるんですか!?』




顔が熱くなるのが分かる。




いきなり何を言い出すの!?




『カーディガンを脱げ』




その言葉で私は、全身が冷える。




脱げられない。




見せられない。




彼にだけは知られたくない…っ




『どうして…ですか』




私は震える声でそう聞く。




『確認するためだ』




確認?と、私は頭を傾げる。




『いいから脱げ』




彼が鋭い目付きで私を見る。




廻さんは何を確認しようというの?




私は一体、どうすれば…




そう考えて、ずっと動けないでいる私に痺れを切らしたのか、彼が私のカーディガンに触れる。




『だ…め』




そろそろと捲られる袖。




露わになる痣。




ーーー見られた。




私は膝から崩れ落ちた。
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