ブラックバカラをあなたへ
そしてその1週間後、高校最後の夏休みが始まった。




初めの1週間は特に遊びに行くわけでもなく、好きな時間に倉庫へ行くという日が続いた。




そして、潤ちゃんが家に帰る前日になる。




私たちは、潤ちゃんを送る会を開催した。




彼女は家に帰るだけで、メンバーから外れたというわけではない。




今までより、倉庫に来る頻度は格段に下がるだろうけれど、ここはもう彼女の居場所で、私たちの仲間で。




だから、送別会ではなく、送る会として開いた。




「潤~また来いよな~」




「私たちはずっと潤の友達だからな!」




「辛いことがあったらお姉さんになんでもいいなよ」




メンバーがそれぞれ潤ちゃんに声をかける。




彼女はその言葉に、嬉しそうに相槌を打っていた。




きっとみんなが、潤ちゃんの心の支えになってる。




だから、頑張って。




私たちも応援してるから。




私は、楽しそうに笑う潤ちゃんの顔を見てそう思う。




そろそろお開きになりそうな頃。




私は潤ちゃんを手招きして呼ぶ。




小走りで私のところに来る潤ちゃんは、小動物のようで、とても愛らしかった。




彼女が隣に来たのを確認して私は声を張り上げる。




「みんな注目!潤ちゃんからみんなに話しあるから!」




先ほどまで騒がしかった倉庫内がシンと静まる。




潤ちゃんはみんなに見られているのが恥ずかしいのか、顔を赤らめながら俯いた。




そんな潤ちゃんの背中をポンと押す。




「伝えたいこと話しちゃいな」




そう言うと、潤ちゃんはコクンと頷いて、みんなの方を向く。




「今日は、私のためにみなさん集まってくれてありがとうございます。




私、みなさんと出会えて本当に良かったです!私を仲間だと言ってくれて、友達だと言ってくれて、すごく嬉しかったです!だから、ここを離れちゃうのは寂しいけど…でも、みなさんと過ごした日々を糧に、これから頑張っていきます!




私、みなさんが大好きです!本当にありがとうございましたっ!」




そう言って彼女は、深々とお辞儀をする。




周りから拍手が上がって、




「私も大好き!」




なんて、みんな口々に叫んでいた。




「私も潤ちゃんと離れちゃうの寂しいな」




胸がきゅうと苦しくなる。




潤ちゃんのいる生活が私の当たり前になっていて、彼女のいないこれからを考えると余計に寂しくなった。




「葉音さんが一番、潤さんとおられましたものね」




優奈が私たちのもとへやって来る。




それに続いて、ほかの4人もやって来た。




「うーちゃん、また遊びに来てね!」




「連絡もしてくれよな!」




「潤さん、応援しているわ」




「みなさん、本当にありがとうございます!」




潤ちゃんが私たちに、ペコペコとお辞儀をする。




「潤ちゃんに出会えてよかった」




そう言って、潤ちゃんの頭を撫でる。




「私もです」




可愛く笑う潤ちゃんの目には、涙が溜まっている。




「潤さん、元気でね」




優奈が、慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。




それから6人で、今までの思い出を思い思いに語り、解散となった。




みんなが帰ってから、潤ちゃんと倉庫出る。




私がバイクのエンジンを掛けている間、彼女は倉庫に深々とお辞儀をしていた。
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