ブラックバカラをあなたへ
みんな考え込んでいるのか、幹部室が静寂で包まれる。




それを破ったのは優奈で、




「葉音さんの意見もお聞かせください」




と、次は私の方を見る。




「私は、もう少し詳しく優奈の考えを聞きたい」




優奈のことだから、誰よりも葛藤して、この案を提示したのだろう。




その考えを私たちは聞くべきだと思った。




「私も、仲葉さんのおっしゃった通り、これは賭けと思っています。みなさんが戸惑うのも分かっていました。




けれど、私はどうしても二人の行方を知りたいのです。あの日のことを、謝罪したいのです。彼らを、あの日から解放させてあげたいのです…そのために、私はいかなる危険も顧みることはしません。せっかく訪れたチャンスを、無駄にしたくないのです」




優奈のその言葉は、決意に満ちていて、私は自然に頷いていた。




「私も優奈と同じ気持ち。だから、私は賛成する。ただ、私たちの正体は絶対にバレちゃダメ。どうにかして、自然と聞けるように作戦をたてたい。みんなはどうする?」




私は、みんなの顔をそれぞれ見渡す。




まだ、悩んでいるのか、燈と春美は黙ったまま。




仲葉は、何を考えているのか分からないけれど、静かにみんなを見ていた。




先に口を開いたのは、燈だった。




「すごく不安だけど、2人のことが分かる可能性があるなら、燈も賭けてみる」




それを聞いた優奈の顔に、安堵の表情が浮かぶ。




「私も考えてみたけど、それ以外に手がかりがなかった…仕方ないか」




春美も、乗り気ではなさそうだが、この案が最終手段だと思ったのだろう。




残る仲葉だが、ここまで来て反対しないということは、彼女も少なからず賛成ということだろう。





「じゃあ、みんなの意見も聞けたし、ここからは作戦会議に移行しようか」




私がそう言うと、各々返事をする。




「とりあえず、あいつらに不審に思われない方法で探りを入れる」




私が、前提を話す。




「不審に思われない…さりげなく聞き出すってこと?」




春美が頭を悩ませながら、私に聞く。




その問いに私は頷いた。




「さりげなくって、どう聞けばいいんだろう?」




燈が頭をかしげる。




さりげなくって、意識すると案外難しそう。




「そこはもう、成り行きなんじゃない?」




春美が少し面倒くさそうに言う。




真面目に考えろと、言い返しそうになったけれど、春美の考えに納得する部分もあった。




そう、自然と会話に織り込ませればいい。




あとはタイミングと聞く相手。




皇夜に聞くといっても、碧斗と咲満は勘が鋭いから、聞くべきじゃない。




探りを入れるなら、他の3人。




その3人なら、時々私たちと、彼らの話をすることがあるから、あまり不審に思われないはず。




少しずつ、私の頭の中で、作戦が組み立てられる。




そして、その案をみんなに話すと、なるほどと言葉が返ってくる。




「だけど、1つだけ問題があるのよね。いつ、あいつらに聞くの?」




今は夏休みで、彼らに会うことがない。




学校が始まるのは、大体半月後。




あまり長い期間ではないが、早く聞けるならばそれに越したことはない。




彼らと遊ぶ約束でもしようかとも思ったが、私たちから誘うとなると、それこそ不自然だ。




「どうしよう…」




私が腕を組んで、そう呟くと、誰かの携帯が鳴った。
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