ブラックバカラをあなたへ
鳴ったのは、どうやら燈の携帯のようで、燈がテーブルに置いてある携帯を取った。




燈が携帯を見るや否や、すぐに、「うそ!?」と、大きな声を出す。




「燈、うるさい」




そんな春美の声も届いていないのか、燈は驚いた顔をして動かない。




「どうしたのですか?」




優奈が、燈に声を掛けると、我に返ったのか、




「これ見て!」




と言って、私たちにLIMEのトーク画面を見せてくれた。




『今週末、俺たちナイトプールに行くんだけど、燈たちも行かない?』




それを見て、私はチャンスだと思った。




「でかした!燈!」




燈の頭を撫でる。




「ナイスタイミングじゃん」




春美もさっきまで、文句を言っていたが、これを見て驚かずにはいられなかったのだろう。




この送り主が、他でもない、皇夜の結我だったから。




「これで、問題もなくなったわね」




仲葉が冷静にそう言う。




「そうですね。燈さん、結我さんに返信お願い致します」




優奈がそう言うと、燈はすぐに携帯を操作する。




「こんないいタイミングで来るなんてね。これで、あいつらが何か知ってたらいいんだけど」




彼らも、私たちのように何も知らないということも、十分にあり得る。




そして、もし、本当にそうだったとしたら、2人の手がかりが全てなくなるという事。




「葉音さん、もし彼らが何も知らなくても、私たちが二人を探し続けることを諦めてはなりません。今までと同じように、頑張りましょう」




優奈が、私の弱い心を立ち直らさせてくれる。




「あいつらに、一歩近づくような真似をするわけだけど、みんな覚悟はいい?」




私は立ち上がって、みんなの顔を真っすぐにみる。




きっとみんなも、不安や迷いでいっぱいだろうけれど、それを見せず、真剣な目で私を見つめ返してくれる。




「決行は今週末。少しでもいい、2人の情報をもらうわよ」




そうして、静かに私たちの作戦が動き出した。
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