ブラックバカラをあなたへ
きっと今は9時前ぐらい。
みんな講堂に移動しているのだろう。
下からザワザワと声が聞こえる。
もうすぐで始業式が始まる。
というのに、私は、いや、私達は屋上に来ていた。
その理由は、予鈴が鳴ってすぐの事だった。
『はーちゃん!!』
いつも大きいなと思っていた燈の目。
それがいつも以上に開いている。
いきなり勢いよく開いたドアにみんなは驚いていた。
みんなの注目を集めながらも、燈は私達のクラスに入る。
後ろには眠そうな春実がいた。
多分、さっきまで寝ていたのだろう。
くぁと欠伸をしていた。
燈が私の元に来ると、仲葉と優奈も呼ぶ。
優奈は不思議そうな顔をしながら勉強していた手を止めこちらへ来る。
仲葉は顔を一度あげたと思えば、また本に視線を戻し、読みながら私の元へ歩いてきた。
よく、来れるものだと感心する。
『でー。話ってなにー?ふぁ』
何回欠伸するんだと言いたいぐらい、春実は大きく口を何度も開く。
欠伸するのはいいけれど、女の子なのだからせめて口元は隠してほしい。
春実らしいといえばらしいけれど、そういう問題ではない。
『それが、ね…』
燈の空気がいきなり暗くて重たいものになる。
それで、ああ、真剣な話なんだと悟った。
『…来るんだって、』
燈から聞こえた声は、いつもの明るいものではなくて。
小さくて、とてもかぼそかった。
『来るって、何がですか?』
優奈の声も少し緊張しているように聞こえた。
数秒ぐらい、その答えを待ってみるが燈からの返答はない。
ずっと口を噤んだまま。
なんとも言えない空気が私達を覆う。
少し経って、燈が口を開く。
絞り出すように燈は話し始めた。
『っ…皇夜、が…来るって…ここ、にっ』
聞き間違い、と思った。
燈、もっとはっきりしゃべってよ。
そう言いたかったのに。
一瞬のうちで喉がカラカラになるのがわかった。
口は開くのに、声が出ない。
もどかしい。
”嘘だと言って”と燈に縋り付きたい。
多分さっきの燈はこんな気持ちなのだろうと思った。
だからこそ、聞き間違いだなんて言えなかった。
息が苦しくなる。
呼吸の仕方が分からない。
元々ここには酸素などなかったのではないだろうかと錯覚をおぼえるほど。
『ね、ねえっ…詳しいことは屋上で、はなそ、っ…』
やっとのことで絞り出した声は自分でも分かるほど震えていた。
みんな講堂に移動しているのだろう。
下からザワザワと声が聞こえる。
もうすぐで始業式が始まる。
というのに、私は、いや、私達は屋上に来ていた。
その理由は、予鈴が鳴ってすぐの事だった。
『はーちゃん!!』
いつも大きいなと思っていた燈の目。
それがいつも以上に開いている。
いきなり勢いよく開いたドアにみんなは驚いていた。
みんなの注目を集めながらも、燈は私達のクラスに入る。
後ろには眠そうな春実がいた。
多分、さっきまで寝ていたのだろう。
くぁと欠伸をしていた。
燈が私の元に来ると、仲葉と優奈も呼ぶ。
優奈は不思議そうな顔をしながら勉強していた手を止めこちらへ来る。
仲葉は顔を一度あげたと思えば、また本に視線を戻し、読みながら私の元へ歩いてきた。
よく、来れるものだと感心する。
『でー。話ってなにー?ふぁ』
何回欠伸するんだと言いたいぐらい、春実は大きく口を何度も開く。
欠伸するのはいいけれど、女の子なのだからせめて口元は隠してほしい。
春実らしいといえばらしいけれど、そういう問題ではない。
『それが、ね…』
燈の空気がいきなり暗くて重たいものになる。
それで、ああ、真剣な話なんだと悟った。
『…来るんだって、』
燈から聞こえた声は、いつもの明るいものではなくて。
小さくて、とてもかぼそかった。
『来るって、何がですか?』
優奈の声も少し緊張しているように聞こえた。
数秒ぐらい、その答えを待ってみるが燈からの返答はない。
ずっと口を噤んだまま。
なんとも言えない空気が私達を覆う。
少し経って、燈が口を開く。
絞り出すように燈は話し始めた。
『っ…皇夜、が…来るって…ここ、にっ』
聞き間違い、と思った。
燈、もっとはっきりしゃべってよ。
そう言いたかったのに。
一瞬のうちで喉がカラカラになるのがわかった。
口は開くのに、声が出ない。
もどかしい。
”嘘だと言って”と燈に縋り付きたい。
多分さっきの燈はこんな気持ちなのだろうと思った。
だからこそ、聞き間違いだなんて言えなかった。
息が苦しくなる。
呼吸の仕方が分からない。
元々ここには酸素などなかったのではないだろうかと錯覚をおぼえるほど。
『ね、ねえっ…詳しいことは屋上で、はなそ、っ…』
やっとのことで絞り出した声は自分でも分かるほど震えていた。