ブラックバカラをあなたへ
プールに来て、私はまた感嘆の声を漏らした。




それはみんなも同じようで、あまりのすごさに呆けていた。




ピンクと紫が混合したライトアップに、プールの青さが際立っている。




プールの中には、小さな色とりどりのボールが浮かんでいる。




周りにはヤシの木が植えられていて、華々しく感じられた。




まだ、18時半ぐらいだったが、既に大勢の客が訪れていた。




「すごい…」




この圧巻の光景には、滅多なことでは驚かない仲葉でも衝撃だったようだ。




「なんか、私たち、やばいとこに来ちゃったんじゃないの…」




春美が後悔からなのか、嬉しさからなのか、どちらともとれる言い方をする。




とにかく私たちは、この素晴らしさに惚れ惚れしていた。




そんな空気をぶち壊したのは、見ず知らずの若い3人の男だった。




「お姉さんたち、俺らと一緒に遊ばない?」




そう言って1人の男が優しそうに笑うけれど。




「はあ?あんた達みたいな奴と遊ぶわけないでしょ?」




春美が黙って聞くようなタイプでないことは、周知の事実で。




春美の態度を見て、3人の顔が引きつるのが分かる。




「いやいや、君たちも出会いを求めてここに来たんでしょ?」




笑顔を引きつらせながら、もう1人の男が言う。




「私たちは、そんな低能な考えでここに来たわけじゃないわ」




仲葉が3人を睨むと、男たちは一瞬怯んだものの、段々と怒りに満ちた顔へと変わる。




これは、あいつらに会う前に、一波乱ありそう…




私はそう、呑気に考える。




「てめえら…俺たちがこうして誘ってやってんのに、その態度はなんだ?」




3人目が口を開く。




どうして、こんな上から目線の発言が出るのやら。




そんなこと言ったら、こっちだって黙ってはいられないというのに。




「あらあら、私たちがいつあなた達に誘ってほしいとお願いしたのでしょう。私たちとは初対面のはずでしたが…ああ、それとも、あなた達の存在感が薄くて、私としたことが覚えていないのかもしれませんね」




優奈が頬に手を添え、静かに微笑む。




ほら、見たことか。




優奈のあの笑みは、ただの侮辱。




眼中にもないと言っている。




「お前ら、何様のつもりだーーー」




逆麟に触れたのか、私たちに話しかけてきた男が、優奈に手を上げようとするが、




「お前らこそ何様のつもりだ」




上に振り上げた男の手を、誰かが軽々と掴んだ。




男たちの後ろにいる人物をよく見ると、そこには結我が立っていて、その両隣には、滾と薙の姿もあった。




結我の声は少し殺気立っていて、男たちは「男がいたんだったら先に言えよ~!」と、情けない捨て台詞を吐いて、すぐさま退散していった。




まあ、そういう意味の男ではないから、あの3人に言うことはなかったろう。




それにしても、結我でもあんな声が出せるんだなと、少し感心してしまった。




「助けていただいて、ありがとうございます」




優奈がそう言うと、




「気にしないで!」




と、結我はいつものおちゃらけた雰囲気に戻っていた。
< 83 / 106 >

この作品をシェア

pagetop