ブラックバカラをあなたへ
「そういえば、ずっと前から気になってたんだけど、前の皇夜の幹部って転校しちゃったの?」




私は、自然とそう口にしていた。




私の発言で作戦が決行されたと気づいたのだろう、みんなの目が一瞬真剣なものになる。




前の幹部の3人は死んで、残りの2人は行方をくらませた。




それを知っているのは、私たちと、恐らく今の幹部だけ。




ただ、碧斗達の行動を見るに、なぜそうなったかは知らない。




あの日の事は聞いていないはずだ。




「いや…どうなんだろうな」




結我の声が暗いものに変わる。




「いきなりいなくなっちゃったから、一時期すごい噂になってたね~」




燈が、事情を知らないと言いたげに話に加わる。




「俺たちも、なんで急にいなくなったのか知らねぇんだ」




滾が寂しそうに苦笑する。




「じゃあ、みんなも、あの人たちがどこにいるのか知らないのかあ」




燈が残念そうに言う。




やっぱり、2人の居場所は彼らも知らないのか。




それとも、隠しているだけのか。




でも、この2人の反応を見るに、その線は限りなく薄い。




これでまた、振出しに戻ったわけね…




一体、どこにいるの…




私たちとは、もう顔も合わせたくない?




それなら、彼らとの縁まで切る必要はない。




私たちにも、彼らにも、会いたくない理由があるのか。




それとも、もう…2人までーーーー




「そういえば、下っ端の子たちがそれらしい2人を見たって言ってたかも」




薙の言葉に胸がドクンと鳴る。




「それ、本当なのか!?」




私たちより、話に食いついたのは滾だった。




きっと、彼らも2人に会いたくて仕方ないのだろう。




「なんで教えてくれなかったんだよ!」




結我も少し慌てているのか、薙の肩を揺さぶる。




「いや、確証もないし…それに、鬼龍の連中といたって言うから、見間違いってことで片付いて」




「鬼龍と?それじゃあ、違うかもな…」




結我は残念そうに言うけれど、私たちには十分な情報だった。




鬼龍ーーーそれは、皇夜とも匹敵するほどの勢力を持った暴走族。




皇夜は仲間を重視する反面、鬼龍は力が全ての世界。




ルールなんてものはなく、勝った者が上に立ち、絶対的な支配者となる。




そんな鬼龍と2人が接触をした。




私の頭の中で、一つの仮説が立てられる。




それは、あまりにも残酷で、その仮説が現実にならないことを祈るしかなかった。
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