ブラックバカラをあなたへ
碧斗side




夏休みも半ばに差し込まった頃、結我がナイトプールに行こうと提案してきた。




高校最後の夏休みという事もあり、みんなで遊びたいのだろう。




それなら、わざわざ人が多い所を選ばずに、もっと違う何かで遊びたいものだが。




滾と薙も行く気満々になってしまって、俺と咲満は半ば強制的に行くことになってしまった。




「はあ…女がうぜぇ…」




「同感です」




更衣室で着替えながら、俺と咲満が小言を言う。




ここまで来て引き返すわけにもいかないことは分かっているが、どうも女どもの視線や声に不快になるのも目に見えて分かるので、気が滅入る。




「今日はスペシャルゲスト呼んでるから、大丈夫!」




結我が、俺たちにグッと親指を立てる。




スペシャルゲスト…?




どうも嫌な予感しかしない。




大抵の場合、こういう時の結我は碌な事を考えていない。




誰を呼んだんだ?




ここで問いただしたとしても、来てからのお楽しみとかなんとか言われそうなので、とりあえず黙っておくことにした。




俺たちが入場してから30分後ぐらいに、結我と双子が、そのスペシャルゲストとやらを迎えに行った。




暇になった俺と咲満は、休憩場のような所で、椅子に座って駄弁っていた。




「碧斗~咲満~連れてきたよ~!」




俺たちを呼ぶ、薙の声がする方を見ると、そこには、何故かあの女どもがいて。




せっかくの休みだってのに、なんでこいつらの顔見なきゃなんねぇんだ。




「おい、なんでこいつらがいんだ?」




「俺が呼んだ~」




それは知ってんだよ。バカ結我。




「スペシャルゲストとは、この人たちのことだったんですか?」




「そうそう!驚いただろ!」




滾の明るい声が耳に残る。




驚く?




それよりも、やってくれたなって感じだ。




なんで、俺はこうも、こいつらの顔を見ると腹が立って仕方ねぇんだ…




「驚いたというより、呆れています。普通、誘われても来ないでしょう」




咲満の言う通りだ。




こいつらも少なからず、俺らに敵意があったはずだ。




それなのに、なんでこの誘いに乗った?




まあ、そんなことはどうでもいい。




とにかく俺は、こいつらの顔を見たくない。




同じ場所にいたくない。




「帰れ」




冷たい声が木霊する。
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