ブラックバカラをあなたへ
春美と燈が戻って来て、みんなが落ち着きを取り戻してから、今後についてを話し合う。




「もし、はーちゃんの言う通りだとしても、燈はあの2人にそんなことしてほしくない…」




「そうね。でも、それであの二人が報われるなら、私たちにそれを止める権利はない」




仲葉が燈に冷たくそう言う。




燈の言い分も、仲葉の言い分も、どっちも正しい。




だからこそ、どうするべきなのか分からない。




「私もさ、あいつらのこと殺したいほどに憎い。だから、あの2人を止めるってなっても、本当にできるかわかんない」




春美の言葉に、私は心の中で同感してしまう。




そう、私はずっとあいつらを殺したくて仕方がない。




憎くて仕方がない。




どうして、彼らは死んだのに、あいつらはまだ生きてるの?




お前たちも死ぬべきでしょ?




そんな醜いことを考えている。




けれど、それを実行に移さないのは、人を殺すという意味を知っているから。




もう、誰も殺したくないから。




「仲葉さんの考えも、春美さんのお気持ちも私はすごく分かります。ですが、燈さんの言う通り、彼らに道を踏み外してほしくはありません。




彼らはただの被害者です。自分から将来を奪うなどあってはなりません。鬼龍を消して、彼らが報われるというのなら、私たちの手でそれをすべきです」




優奈は毅然とした態度でそう言うけれど。




私は、みんなが手を出すことにも賛成できない。




みんなには、幸せに生きてほしい。




今まで、たくさん辛いことがあった。




だからこそ、これからは、楽しくて、明るい未来を夢見てほしい。




そう考えると、解決策は一つしかない。




けれど、それは、私の根底を揺るがすもの。




簡単に決心がいくものではない。




「とりあえず、この案件は持ち越しにしよう。先に2人を見つけ出すことが優先。これは全部憶測にすぎないから、2人に話を聞く方がいいでしょ。




鬼龍と接触したってことと、それを皇夜の人が見たってことから、2人は案外近くにいるかもしれない。片っ端から情報収集してみよう」




みんなまだ、心にモヤモヤとした何かが渦巻いているだろうけれど、私の提案に賛同してくれた。




私たちはそれから、2人の情報収集の作戦を練ることにした。
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