真白物語
ウサギ一家
第一話 子ウサギましろ
あれから約三年後ーー。
今日もまくろはパン屋の仕事をしていた。だが、まくろの顔は暗かった。あの日から四ヶ月からは、くろまあが店に来なくなったからだ。くろまあは毎日パンを買いに来てくれていたのに。
「心配だなぁ…もしかして、私のことが嫌いになったのかな…」
その時。
ガサガサっ!!!
しげみから音がした。まくろは驚いてしげみの方を振り返り、しばらくしげみを凝視する。しかし、なにも起きなかった。
「?」
まくろは不思議に思って、しげみにじりじりと近づいてみた。そのとたん!
「みーーっ!!」
とばかりに叫び、白い子ウサギがしげみから飛び出した。まくろは驚いて腰を抜かし、しりもちをついたまま動けなくなってしまった。
「まみっ、まみっ」
その子ウサギは、次々と店のパンを食べてゆく。メロンパン。食パン。クロワッサン。ベーコンパン。レーズンパン。フィッシュサンド。特製ドーナッツ。チーズパン。お米パン………。
子ウサギがパンを食い荒らす姿を見ることしかできないまま、まくろは手を伸ばしてうめいた。
「あ………ああ………っ」
そしてついに、子ウサギはパンを食べ尽くしてしまった。その瞬間。
「か、可愛い~!!!!!」
と言って、まくろは子ウサギに抱きついた。
「み?み?」
子ウサギはなにがなんだかわかっていない。だが、じたばたしたりはせず、まくろを警戒しているわけではなさそうだった。そして、まくろのにおいをかぐと、まくろの目をまっすぐ見て
「まい~」
と笑った。とても純粋な笑顔だった。まくろは、その笑顔に圧倒されて頭の中が真っ白になってしまった。
だが、我に返り、子ウサギに
「お母さんとお父さんは?」
と問い掛けた。子ウサギは
「みぃ?」
と首をかしげる。わからないようだ。そこでまくろは、
「何歳?」
と聞いてみる。すると子ウサギは、
「みっ!」
と小さい三本の指を出した。三歳らしい。まくろは思考回路を巡らす。
ーーー引き取ってあげるべきだろうか。親は知らないけど、三歳なんて放っておけないし。それに、三歳で言葉が喋れないのはおかしいかもしれない。仮に、親がいるなら。ということは、親がいないのか?
そしてまくろは、子ウサギを抱き上げ、
「今日から私がママだよ!」
と言い聞かせた。子ウサギは
「まんま、まんま!」
とまくろを真似し、無邪気に笑った。まくろは子ウサギを撫でる。そこで、重要なことを思い出した。
「あなた、名前は何て言うの?」
子ウサギは答えない。名前がないのだろうか。そこでまくろは、子ウサギの名前を考えることにした。
「うーむ、白い…真っ白…大食い…」
すると、まくろのつぶやきを聞いていた子ウサギが、まくろの言葉を真似ていった。
「まちろ!」
まくろは、はっと振り返り、
「ましろ…!あなたの名前は、ましろよ…!」
「まちろ?」
「そう、偉いわ、ましろ…!」
まくろがましろを撫でると、ましろはキャハハと嬉しそうに笑いながらいった。
「まちろっ!」
こうして、二人の新たな生活が始まった。
あれから約三年後ーー。
今日もまくろはパン屋の仕事をしていた。だが、まくろの顔は暗かった。あの日から四ヶ月からは、くろまあが店に来なくなったからだ。くろまあは毎日パンを買いに来てくれていたのに。
「心配だなぁ…もしかして、私のことが嫌いになったのかな…」
その時。
ガサガサっ!!!
しげみから音がした。まくろは驚いてしげみの方を振り返り、しばらくしげみを凝視する。しかし、なにも起きなかった。
「?」
まくろは不思議に思って、しげみにじりじりと近づいてみた。そのとたん!
「みーーっ!!」
とばかりに叫び、白い子ウサギがしげみから飛び出した。まくろは驚いて腰を抜かし、しりもちをついたまま動けなくなってしまった。
「まみっ、まみっ」
その子ウサギは、次々と店のパンを食べてゆく。メロンパン。食パン。クロワッサン。ベーコンパン。レーズンパン。フィッシュサンド。特製ドーナッツ。チーズパン。お米パン………。
子ウサギがパンを食い荒らす姿を見ることしかできないまま、まくろは手を伸ばしてうめいた。
「あ………ああ………っ」
そしてついに、子ウサギはパンを食べ尽くしてしまった。その瞬間。
「か、可愛い~!!!!!」
と言って、まくろは子ウサギに抱きついた。
「み?み?」
子ウサギはなにがなんだかわかっていない。だが、じたばたしたりはせず、まくろを警戒しているわけではなさそうだった。そして、まくろのにおいをかぐと、まくろの目をまっすぐ見て
「まい~」
と笑った。とても純粋な笑顔だった。まくろは、その笑顔に圧倒されて頭の中が真っ白になってしまった。
だが、我に返り、子ウサギに
「お母さんとお父さんは?」
と問い掛けた。子ウサギは
「みぃ?」
と首をかしげる。わからないようだ。そこでまくろは、
「何歳?」
と聞いてみる。すると子ウサギは、
「みっ!」
と小さい三本の指を出した。三歳らしい。まくろは思考回路を巡らす。
ーーー引き取ってあげるべきだろうか。親は知らないけど、三歳なんて放っておけないし。それに、三歳で言葉が喋れないのはおかしいかもしれない。仮に、親がいるなら。ということは、親がいないのか?
そしてまくろは、子ウサギを抱き上げ、
「今日から私がママだよ!」
と言い聞かせた。子ウサギは
「まんま、まんま!」
とまくろを真似し、無邪気に笑った。まくろは子ウサギを撫でる。そこで、重要なことを思い出した。
「あなた、名前は何て言うの?」
子ウサギは答えない。名前がないのだろうか。そこでまくろは、子ウサギの名前を考えることにした。
「うーむ、白い…真っ白…大食い…」
すると、まくろのつぶやきを聞いていた子ウサギが、まくろの言葉を真似ていった。
「まちろ!」
まくろは、はっと振り返り、
「ましろ…!あなたの名前は、ましろよ…!」
「まちろ?」
「そう、偉いわ、ましろ…!」
まくろがましろを撫でると、ましろはキャハハと嬉しそうに笑いながらいった。
「まちろっ!」
こうして、二人の新たな生活が始まった。