スペル

強襲

リスベール「そうだったんだ。だから、あなたはスキルを知らないと言うのね?」

顔を洗ってすぐ、先程の部屋へ向かうと、リスベールが座って待っていた。入って座らせられるの、すぐ質問攻めにあった。


アイン「はい…。」


デューイ「それ本気で言ってるのか?お前が言ってるのはつまり、《 異世界転移のスキル》を食らったってことだぞ?」


リスベール「でも、それは秘宝クラスのアイテムか魔王の固有の力…スペルじゃないと発現不可のはず。つまりあなたは、誰かが呼び寄せてしまった人間かあるいは、魔王が召喚した怪物ってことになるのかしら?」


アイン「俺は怪物じゃなく、人間です!」


デューイ「でもなぁ、じゃあお前がスキルを知らないのに、あの剣を使えたのはなんでだ?あのクラスのスキルは相当レベルが高いかスキルになれていなければ初っ端は使えないぞ。上位スキルだからな。魔王から何かしらのスキルを授かってそれを使い慣れてるってことじゃないのか?お前が人間ってのは少々信じられねぇな。」


アイン「でも…スキルなんて使い方も知らないです…。」


デューイがあの剣、と言った時にリスベールの顔つきが少し険しくなった。


リスベール「あの剣?ちょっと待って、デューイ、もしかしてコンパクトタイムのスキルを彼に渡したの?」


デューイ「あっ…いや、あの…。どうせ使えないと思って…。」


リスベール「デューイ!あれは下手したら死ぬレベルのスキルの剣よ?彼を殺すつもりだったの?それに、あれは村の宝でしょう?簡単に誰かに渡すなんて…。」


キッとリスベールに睨まれデューイはカタカタ震えながら謝った。


デューイ「ゴメンナサイ…。」


リスベール「全く、これからは気をつけてよね。アイン君にスキルの適性があったからまだ良かったものの。」


アイン「適性って何ですか?ていうか、俺死ぬ所だったんですね…。」


ビクビクしながら、デューイが答える。


デューイ「まぁ、そういうことだな。適性ってのはスキルを使い続け、慣れると発現し出す、人によって異なる得手不得手のことだ。俺はコンパクトタイムのスキルを使えるが、使えても5秒なんだ、使えはするが適正はないってことだな。しかし、お前はそれを20秒も使ったんだ。」


リスベール「つまり、あなたはスキル慣れによる適性が発現してるってことなの。これはおかしいでしょう?もし仮に、人間によって《 異世界転移》を食らったとしたら、発現するわけがない。別世界にスキルのようなものがあったとしても、この世界には持ち込めないからね。要するに、あなたは人間ではなく、魔王によって呼び寄せられ、さらにスキルを授かっていたってことになるわね。」


言いつつ、リスベールとデューイは剣の柄を握る。二人ともピリピリとした空気をまとっていた。


アイン「ちょ、ちょっと待ってください。なら俺はこの世界にとって災厄のようなものであり、消えるべきってことですか?」


リスベールは少し考えるそぶりを見せ、答えた。


リスベール「そういう訳では無いのだけれど。でも、かなり危険な存在であることは間違いないわね。」


デューイ「そういうこと。やるか?リス?」


アインはその言葉に驚き、普通に殺そうとしているデューイにも驚いた。リスベールがどうすべきか決めかね、悩んでいると不意に外から


「キャアアアア!!」


と悲鳴が聞こえてきた。デューイは立ち上がり、素早く外へ飛び出した。


リスベール「デューイ!待ちなさい!アイン君、来なさい!あなたを野放しにはできないわ!」


リスベールがそう叫び、アインの腕をつかんで走り出した。


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