スペル
門へ近づくにつれて、ざわざわと騒がしくなってくる。アインとナランハが吊り橋にたどり着くと、怒声が聞こえた。どうやら、門兵が大きな荷物を背負った小太りの男ともめているようだった。


ナランハ「おーおー、やってるねぇ。おい、アイン、見に行ってみようぜ。」


そう言うと、ナランハは楽しそうにもめているところへすたすたと歩いて行った。アインはひとりで行動するわけにも行かず、はぁ…とため息をひとつつき、ついて行った。


「だから!この袋の中身は薬とか日用品なんだって!怪しいもんなんか入ってないよ!」


門兵「ならば何故それの中身を見せないんだ?見せれば解決する問題だろうが!」


「うっ…それは…。この袋の中身は少々特別で…。とにかく、見せれないんだ!」


ナランハ「まーまー、お二人さん、少し落ち着こうぜ?こんな人通りの多い橋げたでする話でもないだろ?」


門兵「貴様は誰だ!関係ないやつはすっこんでろ!」


門兵の乱暴な言葉で、ナランハの眉間にややシワがよる。


ナランハ「あぁ?言い合いしてたから止めてやろうとしてるだけだろ?」


商人「余計なお世話だ!」


小太りの商人も息を巻きつつ言い放つ。ナランハの眉間にさらにシワがよった。


ナランハ「こいつら…人が優しくしたらつけあがりやがって……!!」


アイン「ちょ、ちょ!ナランハ!落ち着いて!」


今にも飛び掛りそうなナランハをアインが慌てて抑える。女性とは思えないくらいの力で暴れるナランハに驚きつつ、商人と門兵に声をかける。


アイン「いったいどうしたんですか?何を揉めてるんです?」


商人「この門兵が荷物が怪しい、開けろというんだ!橋にかかってる調査スキルで変なところはないとわかっているのに!」


門兵「だからその調査スキルで見通せないものが入ってたから確認のために袋を開けてくださいと言ってるんだ。早く開けろ!」


商人「嫌だと言っているだろうが!」


言い合いはヒートアップする。通行人は近くによらずに素早く橋を通り抜けていく。業を煮やしたナランハが素早く抜剣すると、商人に向けて構えた。


ナランハ「おい、門兵。こいつの荷物の中身が分かればいいんだろ?俺が見せてやるよ…!」


アイン「ちょっと、ナランハ!落ち着いて!」


商人はカタカタと震え、逃げようとする。門兵がそれを後ろから羽交い締めにして、ナランハに差し出す。


門兵「ああ、構わん、やってくれ。」


アイン「ナランハ!何するつもりだよ!やめろって!」


ナランハ「いいから見てろアイン。全てを見通し、貫く光よ。集いて輝き、妖しきものを映し出せ。スキル・幻想刀過。」


ナランハの持つ剣が白く光る。商人が激しく暴れだした。ナランハはそれを見てニタリと笑うと、商人をまっぷたつに切った。


商人「やめろおおお!!」


商人の悲鳴が、橋に響き渡った。








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