スペル
アイン「ここ…あの時と同じ夢の中かな。」
つぶやきが反射し、こだまする。不思議な空間だった。そのおかげで、すぐに夢の中だと気づくことが出来た。しばらくふわふわと浮いていたが、見たことがない建物が目の前に現れ、その建物の扉の前へとふわりと着地する。体が勝手に動いて、扉を開けて中へ入っていく。少し進むと、大きな机の上に水晶玉が乗っており、手前側と奥側に椅子が置かれた占い部屋のような所へ出た。自然な流れでそのまま手前側の椅子に座ってしまう。
アイン「なに、これ。ここ、どこ?」
「ここは、夢落の者達の住まう土地。予言の島、アウンライト。」
聞き覚えのある声が左側から聞こえてきた。素早く左を向くが、誰もいない。
アイン「…なんで俺はそのアウンライトに連れてこられてるの?」
「…あなたが、勇者であり、魔王と同じく夢落の者だからです。」
今度は右側から聞こえてきた。同じように右を向くが、やはり誰もいない。困惑しながらも、会話を続ける。
アイン「残念だけど、俺は勇者じゃないよ。みんなと違って強いスキルを身につけているわけでもないし。大体、弱いしね俺。」
「スキルの…いえ、スペルを使った時の記憶を、封じられているのですね。」
耳元でささやき声が聞こえた。もう声の方を向かずに謎の声と会話を続ける。
アイン「スペルって?」
「勇者と魔王、夢落の者だけが持つスキル。それがスペル。」
アイン「どんな効果があるスキルなの?」
「すべてのスキルを無詠唱でなおかつ最上の威力で使うこと、さらにすべてのスキルを見たものであればコピーすることのできるスキルです。ただし、実力が伴わない場合はそれ相応の代償を必要としますが。」
気がつくと、目の前の水晶の向こう側の椅子に薄紫のフードをかぶった人が座っていた。
「どうも、こんにちは。私はエーレ。夢落の国を治める者。」
アイン「どうも。そんで、夢落にスペルとかいうスキル…。そんなもの、俺が持ってるなんてにわかには信じ難い話なんだけど。」
エーレ「信じてもらおうとは思っていません。信じようが、信じまいが、事実なのですから。それに、アナタは一度体現したのですよ。」
アイン「覚えてない。…それで、なんで俺を突然呼び出したの?」
エーレ「話がそれてしまいましたね、それは、勇者であるあなたにある事を伝えなくてはならないからです。この、無限に繰り返す世界で幾度となく失敗してきたあなたへ。無限の繰り返しを止めるために何をするべきなのかを。」
アイン「無限に繰り返す世界…。」
エーレ「はい。この世界、エンバライヤは無限世界と呼ばれています。なぜか、というと一定の周期で滅びと再生を繰り返すからです。いま、魔王が現れたこの世界は、再び滅びを迎え始めています。」
アイン「つまり、繰り返しが行われようとしているってことか。」
エーレ「そうです。そして、その繰り返しを止めなければなりません。」
アイン「それはまた、なんで?」
エーレ「今回だけしかチャンスがないのです。あなたが、ここに来るまでの選択を間違えておらず、「黒」に無限回帰される前に止めることが出来る可能性があるのは。」
そういうと、エーレは右手を水晶玉に乗せ、左手を俺のおでこに押し付けるとボソリとつぶやいた。瞬間、超高圧の電流が流れたかのように、体がビクッ!と反応した。
エーレ「夢落の力により、しがらみを解き放て。あまたの繰り返しを見せたまえ。」
アイン「これ…は…!」
ザーー。ザーー。砂嵐のようなものが頭に浮かび、鮮明な映像を映し出しはじめた…。
どこかの戦場だろうか。人や異形の魔物、動物など様々な死体が辺り一面に転がっている。その近くで、俺が地面に座り込み、何かをしていた。
アイン「こんな…こんなはずじゃ…ナランハ……!」
…その映像を否定したかった。俺は、血だらけの腕でナランハを抱きながら涙目で叫んでいた。ナランハが薄く目を開けて、小さな声で話しかけてくる。
ナランハ「ははっ…大丈夫、だ。俺はこんな…とこ…ろ…で……。」
しかし、言い終わる前に、ナランハは死んでしまった。くたり、と体が崩れる。
アイン「うあああああ!!!」
大きな叫び声だけがむなしくこだました…。
ザザッ…また砂嵐の情景が流れ、再び景色が変わる。今度は見知らぬ街の酒場のようだ。俺が、知らない人たちと話をしていた。
青い髪の女「本気なんだ、ね?」
アイン「ああ、やつを倒す。そうすれば、この崩壊は止まるかもしれないんだから。」
赤い目の男「だな、仕方ねぇ。協力してやるよ。」
アイン「ああ、すまないな。二人は、どうする?」
紫の髪の女「私は行く。そこでなら貴重な魔法書がてにはいりそうだし。」
青い髪の女「はいはい!わかってるわよ!どうせ行くっきゃないんでしょ!一度決めたら本当に真っ直ぐなんだから。」
アイン「悪いな、みんな。ありがとう。」
ザッザーッ。砂嵐が流れる。先程までと違い砂嵐が溶けると、元の景色に戻っていた。
アイン「今のは…なんなんだ!あれは!あの映像は!!」
エーレ「繰り返した未来のそれぞれの経過。あなたは、今までに何回もこの世界で生きて、死んで、転生している。そのたびにあなたは、幾度となく様々な運命の選択をして、その時々のあなたの仲間達とともに死んでいった。」
エーレが告げたのは、衝撃の事実だった。
つぶやきが反射し、こだまする。不思議な空間だった。そのおかげで、すぐに夢の中だと気づくことが出来た。しばらくふわふわと浮いていたが、見たことがない建物が目の前に現れ、その建物の扉の前へとふわりと着地する。体が勝手に動いて、扉を開けて中へ入っていく。少し進むと、大きな机の上に水晶玉が乗っており、手前側と奥側に椅子が置かれた占い部屋のような所へ出た。自然な流れでそのまま手前側の椅子に座ってしまう。
アイン「なに、これ。ここ、どこ?」
「ここは、夢落の者達の住まう土地。予言の島、アウンライト。」
聞き覚えのある声が左側から聞こえてきた。素早く左を向くが、誰もいない。
アイン「…なんで俺はそのアウンライトに連れてこられてるの?」
「…あなたが、勇者であり、魔王と同じく夢落の者だからです。」
今度は右側から聞こえてきた。同じように右を向くが、やはり誰もいない。困惑しながらも、会話を続ける。
アイン「残念だけど、俺は勇者じゃないよ。みんなと違って強いスキルを身につけているわけでもないし。大体、弱いしね俺。」
「スキルの…いえ、スペルを使った時の記憶を、封じられているのですね。」
耳元でささやき声が聞こえた。もう声の方を向かずに謎の声と会話を続ける。
アイン「スペルって?」
「勇者と魔王、夢落の者だけが持つスキル。それがスペル。」
アイン「どんな効果があるスキルなの?」
「すべてのスキルを無詠唱でなおかつ最上の威力で使うこと、さらにすべてのスキルを見たものであればコピーすることのできるスキルです。ただし、実力が伴わない場合はそれ相応の代償を必要としますが。」
気がつくと、目の前の水晶の向こう側の椅子に薄紫のフードをかぶった人が座っていた。
「どうも、こんにちは。私はエーレ。夢落の国を治める者。」
アイン「どうも。そんで、夢落にスペルとかいうスキル…。そんなもの、俺が持ってるなんてにわかには信じ難い話なんだけど。」
エーレ「信じてもらおうとは思っていません。信じようが、信じまいが、事実なのですから。それに、アナタは一度体現したのですよ。」
アイン「覚えてない。…それで、なんで俺を突然呼び出したの?」
エーレ「話がそれてしまいましたね、それは、勇者であるあなたにある事を伝えなくてはならないからです。この、無限に繰り返す世界で幾度となく失敗してきたあなたへ。無限の繰り返しを止めるために何をするべきなのかを。」
アイン「無限に繰り返す世界…。」
エーレ「はい。この世界、エンバライヤは無限世界と呼ばれています。なぜか、というと一定の周期で滅びと再生を繰り返すからです。いま、魔王が現れたこの世界は、再び滅びを迎え始めています。」
アイン「つまり、繰り返しが行われようとしているってことか。」
エーレ「そうです。そして、その繰り返しを止めなければなりません。」
アイン「それはまた、なんで?」
エーレ「今回だけしかチャンスがないのです。あなたが、ここに来るまでの選択を間違えておらず、「黒」に無限回帰される前に止めることが出来る可能性があるのは。」
そういうと、エーレは右手を水晶玉に乗せ、左手を俺のおでこに押し付けるとボソリとつぶやいた。瞬間、超高圧の電流が流れたかのように、体がビクッ!と反応した。
エーレ「夢落の力により、しがらみを解き放て。あまたの繰り返しを見せたまえ。」
アイン「これ…は…!」
ザーー。ザーー。砂嵐のようなものが頭に浮かび、鮮明な映像を映し出しはじめた…。
どこかの戦場だろうか。人や異形の魔物、動物など様々な死体が辺り一面に転がっている。その近くで、俺が地面に座り込み、何かをしていた。
アイン「こんな…こんなはずじゃ…ナランハ……!」
…その映像を否定したかった。俺は、血だらけの腕でナランハを抱きながら涙目で叫んでいた。ナランハが薄く目を開けて、小さな声で話しかけてくる。
ナランハ「ははっ…大丈夫、だ。俺はこんな…とこ…ろ…で……。」
しかし、言い終わる前に、ナランハは死んでしまった。くたり、と体が崩れる。
アイン「うあああああ!!!」
大きな叫び声だけがむなしくこだました…。
ザザッ…また砂嵐の情景が流れ、再び景色が変わる。今度は見知らぬ街の酒場のようだ。俺が、知らない人たちと話をしていた。
青い髪の女「本気なんだ、ね?」
アイン「ああ、やつを倒す。そうすれば、この崩壊は止まるかもしれないんだから。」
赤い目の男「だな、仕方ねぇ。協力してやるよ。」
アイン「ああ、すまないな。二人は、どうする?」
紫の髪の女「私は行く。そこでなら貴重な魔法書がてにはいりそうだし。」
青い髪の女「はいはい!わかってるわよ!どうせ行くっきゃないんでしょ!一度決めたら本当に真っ直ぐなんだから。」
アイン「悪いな、みんな。ありがとう。」
ザッザーッ。砂嵐が流れる。先程までと違い砂嵐が溶けると、元の景色に戻っていた。
アイン「今のは…なんなんだ!あれは!あの映像は!!」
エーレ「繰り返した未来のそれぞれの経過。あなたは、今までに何回もこの世界で生きて、死んで、転生している。そのたびにあなたは、幾度となく様々な運命の選択をして、その時々のあなたの仲間達とともに死んでいった。」
エーレが告げたのは、衝撃の事実だった。