スペル
アイン「この…剣抜けないっ!」
取り残されてから5分後、アインは地面に刺さった剣を引き抜こうと柄を握り、引っ張っていた。しかし、全く抜ける気配はない。
アイン「ちょっと!ほんとにこれどうするの!?抜けなかったらやばいんです……けどっ!」
ギリギリと歯を食いしばり、さらに引っ張る。しかし、抜けない。
アイン「ちっくしょー。あの変な男…。確かに俺は、動けなかったけど…。」
アインは力を抜き、地面に座り込んだ。思わずため息が漏れる。
アイン「はぁ…。そうだな、動けなかった。怖かったからって…。あの場面は動くべきだったよな……。」
独りになると、どんどん暗い気持ちになってくる。さらにここがどこかも分からない怖さから、足を抱え、落ち込んでしまった。
アイン「俺…。どうなるんだろう…。」
日が暮れ、夜が来た。しかし、方角も地図も分からない現状で、アインは動くことが出来ずにいた。剣も抜けず、今襲われたらなす術なくやられてしまうだろうと理解していた。
アイン「ウジウジしてても仕方ないのはわかってるけど、やっぱりもうどうしようもないな…。」
ガサガサっと周りの草むらから音がし、
グルルル…
と、唸り声のようなものが聞こえてきた。
アイン「ウォルフ!?…死ぬのかな?こんな所で…。」
アインが立ち上がり草むらの方を向くと、ほぼ同時にウォルフが1匹飛び出してきた。凄まじいスピードで突進して来るそれは走る車の前に立っているかのような恐怖を感じさせた。
アイン「怖い…怖いよ…。だけど!こんな所で、こんな場所で!死にたくない!」
覚悟を決めたアインは、拳を握り、ウォルフに殴りかかる。
しかし、ウォルフは意にも介さず角でアインを吹き飛ばし、再び地面を蹴り始める。アインは口から血を吐き出し、立ち上がろうとした。
アイン「いっつ…。くっそ…。左腕が…。」
左腕が折れたらしい、変な方向に折れ曲がり、感覚が無く、だらりと垂れている。ウォルフが走り出した。
アイン「はは…。俺は何を勘違いしてたんだろ…。俺が戦えるはずないじゃんか…。…死にたくない…!」
そう呟いた時、周りの時間が、スローモーションのように流れ出した。
アイン「なん…だ?これは…。あぁ…これが、走馬灯…。」
しかし、走馬灯なら、思い出が蘇ってもいいはず、なのに、アインはそのゆっくりと進む時間の中で、ただ座っていた。そばにアイツがなげ、突き刺さっていた剣が見えた。柄を見ると紅く輝いてる。それを見て、アインは気づいた。
アイン「これは…走馬灯じゃないっ…!ほんとに時間がゆっくり流れてるんだ!」
アインが気づくと、剣がひとりでに地面から抜け、アインの右手へ転移してきた。いつの間にか背中に鞘を背負わされていた。
アイン「殺れって…言ってるのか?」
手に収まっている剣を強く握り、ウォルフめがけて走り、振り下ろす。振り下ろしたと同時に、ゆっくりとした時間が突然元に戻り、動きだした。
グギャアア!?」
ウォルフは振り下ろした剣に斬られ、真っ二つになり倒れた。不思議と斬るときに力はいらなかった。
アイン「倒…せた。は…。」
アインは緊張の糸が途切れて倒れ込み、気絶した。そばの木の上から、先ほど去ったはずの男が降りてきて、アインをしばらく見つめ、
「戦えるじゃねぇか…。…ま、俺も悪いしな…仕方ねぇか。」
と呟き、アインを抱え、飛び去っていった。
取り残されてから5分後、アインは地面に刺さった剣を引き抜こうと柄を握り、引っ張っていた。しかし、全く抜ける気配はない。
アイン「ちょっと!ほんとにこれどうするの!?抜けなかったらやばいんです……けどっ!」
ギリギリと歯を食いしばり、さらに引っ張る。しかし、抜けない。
アイン「ちっくしょー。あの変な男…。確かに俺は、動けなかったけど…。」
アインは力を抜き、地面に座り込んだ。思わずため息が漏れる。
アイン「はぁ…。そうだな、動けなかった。怖かったからって…。あの場面は動くべきだったよな……。」
独りになると、どんどん暗い気持ちになってくる。さらにここがどこかも分からない怖さから、足を抱え、落ち込んでしまった。
アイン「俺…。どうなるんだろう…。」
日が暮れ、夜が来た。しかし、方角も地図も分からない現状で、アインは動くことが出来ずにいた。剣も抜けず、今襲われたらなす術なくやられてしまうだろうと理解していた。
アイン「ウジウジしてても仕方ないのはわかってるけど、やっぱりもうどうしようもないな…。」
ガサガサっと周りの草むらから音がし、
グルルル…
と、唸り声のようなものが聞こえてきた。
アイン「ウォルフ!?…死ぬのかな?こんな所で…。」
アインが立ち上がり草むらの方を向くと、ほぼ同時にウォルフが1匹飛び出してきた。凄まじいスピードで突進して来るそれは走る車の前に立っているかのような恐怖を感じさせた。
アイン「怖い…怖いよ…。だけど!こんな所で、こんな場所で!死にたくない!」
覚悟を決めたアインは、拳を握り、ウォルフに殴りかかる。
しかし、ウォルフは意にも介さず角でアインを吹き飛ばし、再び地面を蹴り始める。アインは口から血を吐き出し、立ち上がろうとした。
アイン「いっつ…。くっそ…。左腕が…。」
左腕が折れたらしい、変な方向に折れ曲がり、感覚が無く、だらりと垂れている。ウォルフが走り出した。
アイン「はは…。俺は何を勘違いしてたんだろ…。俺が戦えるはずないじゃんか…。…死にたくない…!」
そう呟いた時、周りの時間が、スローモーションのように流れ出した。
アイン「なん…だ?これは…。あぁ…これが、走馬灯…。」
しかし、走馬灯なら、思い出が蘇ってもいいはず、なのに、アインはそのゆっくりと進む時間の中で、ただ座っていた。そばにアイツがなげ、突き刺さっていた剣が見えた。柄を見ると紅く輝いてる。それを見て、アインは気づいた。
アイン「これは…走馬灯じゃないっ…!ほんとに時間がゆっくり流れてるんだ!」
アインが気づくと、剣がひとりでに地面から抜け、アインの右手へ転移してきた。いつの間にか背中に鞘を背負わされていた。
アイン「殺れって…言ってるのか?」
手に収まっている剣を強く握り、ウォルフめがけて走り、振り下ろす。振り下ろしたと同時に、ゆっくりとした時間が突然元に戻り、動きだした。
グギャアア!?」
ウォルフは振り下ろした剣に斬られ、真っ二つになり倒れた。不思議と斬るときに力はいらなかった。
アイン「倒…せた。は…。」
アインは緊張の糸が途切れて倒れ込み、気絶した。そばの木の上から、先ほど去ったはずの男が降りてきて、アインをしばらく見つめ、
「戦えるじゃねぇか…。…ま、俺も悪いしな…仕方ねぇか。」
と呟き、アインを抱え、飛び去っていった。